丁重にお断りします


「兄さん」

「京介…と、鬼道さん!ご無沙汰してます」

「久し振りだな、剣城優一。脚の調子はどうだ?」

「最近は結構良いです。このままリハビリを続けていればしっかり歩けるようになると担当医が言っていました」

「そうか」


ホーリーロードが終わってから一息ついた最近、病院で兄さんと過ごす日が増えた。鬼道コーチから“久し振りにお見舞いに行っていいか”と連絡が来て、折角だから一緒に行くことにした。
鬼道コーチは帝国に戻ってしまったが、稀に雷門まで来る。円堂監督と今の状況を話したり、今後の練習試合の話をしているのを何度か聞いた。

帝国…。俺と黒木さんが話しているのを兄さんに聞かれて、初めて怒られた。目を醒ました俺は、帝国の守備を崩す必殺タクティクス、アルティメットサンダーを決めた。それからは練習にもちゃんと出たし、兄さんとも仲直りした。
今でも脚の怪我は俺のせいだと思っているが、兄さんのためならどんなサッカーでもやってやる。乗り越えて、みせる。兄さんの分まで俺がサッカーをやる。


「京介、今日天馬君は来ないのか?」

「あ、あぁ。アイツ今度沖縄に行くから、その為の準備で行けないって…」

「そっか。天馬君だったら、普段京介がどんな風にしているのか聞けたのにな」

「……聞かないでくれ」


兄さん、一体アイツに何を根掘り葉掘り聞いてるんだ。アイツは包み隠さずベラベラ喋るから、普段の俺が殻に包まれないで、剥き出しの状態だ。まあ、兄さんの前ではそんな殻は存在しないが…。


「そうだな…。俺が雷門に居た頃の剣城京介は、サッカーへの熱意が人一倍すごか「ストップ!!」

「えー、どうして止めるんだい?折角鬼道さんが京介の話をしてくれていたのに」

「は、恥ずかしいんだよ」

「鬼道さん、雷門に居た時の京介の話、聞かせてください」

「いいだろう」

「俺の気持ちスルー?」


やめてくれ。全力でそう言って否定したいが、兄さんの笑顔には敵わなかった。
サッカーの話になると生き生きしだす兄さんだが、俺の話で生き生きしだす兄さんは初めて見たかもしれない。
兄さんが笑ってくれるのは嬉しいが――…流石に俺の話はやめてほしい。本当に恥ずかしい。


「皆が帰った後も、河川敷で一人練習したりしていたな…」

「どっから見ていたのかは知りませんが、本当にやめてください。するなら俺の居ないところでしてください」

「京介も混ざろうよ」

「恥ずかしいから遠慮します」





(「じゃあ京介の居ないところならいいんだね」)
(「…まあ…」)
(「はは。じゃあ話の続きをお願いします」)
(「俺ここに居るよな?」)



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