君の心にシューティング!
輝くん。
彼は一瞬女の子と間違えてもいいぐらい、女の子のような顔をしている。
そんな彼は、先輩から凄くモテる。雰囲気が柔らかくて、一見守ってあげたいタイプかもしれない。
でもサッカーをやってる時を見ると、強い眼差しでプレーしている。
私は、どっちの輝くんも好きだ。
「ひーかーる君!」
「どうしたの?」
「次試合って、いつある?」
「うーん…それは僕には判んないなぁ…」
「そっかぁ〜。決まったら教えてね!」
「うん」
…あー…輝くんに猛アタックしてるよ…。
私にはあんなこと、出来ない。
臆病者、だから。
さっきアタックしていた子は、私の嫌いな部類に入る。しかもダントツ一位。
なんか見えないところでコソコソしてるから、陰険すぎて嫌だ。
噂では、その子のせいで転校してしまった人がいる、とか。
迂闊に手は出せない。何されるか判らないから。
それで他に輝君を好きっていう子は、全く手を出せないのである。
(もし、あの子が彼女になっちゃったら…)
そう思うと、悔しい。
何も出来なかった自分に腹が立って、意味の無い涙を流すことになる。
そんなのは、ごめんだ。
†ー†ー†
「解った!次の土曜日ね!あたし応援しに行くから!」
「うん!ありがとう」
私は、私は抜け出すんだ。
ありったけの勇気を使うんだ。
「ひ…ひか、る君」
「どうしたの?」
「私も…応援、行く、ね」
「ホント!?ありがとう!」
気のせいかな。
さっきよりも、心なしか喜んでるように見えたんだけど…。
自惚れて、いいかな。
遠くから鋭い視線が送られてきたのは、“調子に乗るな”という意味で間違いない。
†ー†ー†
試合は雷門で行われる。
雷門の生徒や、対戦相手の学校の人達で第二グラウンド周辺は賑わっている。
(あっ、輝く「輝くーん!頑張ってー!」
…出たよ。
周りはぎょっとした目で彼女を見ていた。だけども彼女は輝君だけしか見えてないようだ。
あ、れ。
今輝君と、目、合った。その後微笑まれた。
一気に私の顔は赤くなった。
練習でも、試合は試合。みんな本気でやっている。
輝君は後半になって、フィールドへと出てきた。
そして彼は、ゴールを決めた。
“エクステンドゾーン”。それは私の心にもゴールを決めた瞬間だった。
試合が終わった後、輝君の元へと向かっている途中、例のあの子が話し掛けていた。
でも輝君は私に気付くと、会釈をして私の元へと来たのだ。
「今日は来てくれてありがとう!君のお陰だよ!」
「わ…私…?どうして?」
「僕、君の為に頑張ったんだ!だから!」
私の、為。
明るくて、誰からも良い評判を受けて、モテる輝君。
私は咄嗟に言ってしまった。
「好、き、です」
君の心にシューティング!
(貴方の為なら)
(私だってゴールを決める)
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