あーした天気になーあれ
とある病室の一角。
私は毎日のようにお見舞いに来ている。
コンコン
「失礼しまーす」
扉を開けると、ベッドの上で上半身を起こしてテレビを観ている太陽が居た。
あれか。ホーリーロード。
凄く顔が輝いている。
サッカー、好きだもんなー。
夢中になっているのか、私が入ってきた事に全く気づいていない。
「太陽くんっ!」
「わああっ!ふっ、冬花さっ…って、ビックリしたー…。花菜、冬花さんの真似するのやめてよー…」
「ふふっ。だって太陽ってば、テレビに夢中で気づいてないんだもん」
「だって今の雷門、凄いんだよ!反乱していく中での成長が早いんだ!それに最近知り合った天馬も強くなってる。僕は早くフィールドに立って雷門と戦いたい!」
そういえば、その天馬君は太陽が最近知り合ったんだよね。
サッカーが上手い上手いって褒めてた。
その人が今液晶を超えた先の所にいる。
すごいなぁ、雷門は。
フィフスセクターがサッカーを管理するようになった世の中は、みんな楽しくなさそうなサッカーをする。
でも雷門は生き生きとしてるんだ。
「早くサッカーしたいなぁ…」
テレビを観て、悲しそうな眼をして太陽が言った。
少し伏せた目は、いつも元気な太陽とは違う。
まるで手術しても助からないような事を意味してる様で、私は好きじゃない。
手術したら治る“かも”、と思っているからだろうか?
…絶対治るもん。
私はそう信じてる。
「そんな太陽に…はいっ!」
「何?これ」
「サッカーおにぎり!今日はちょっと早めに起きて作ったんだ!」
「へぇ…!中身は?」
「食べてからのお楽しみ〜」
好奇心の眼に変わった。
私はこの眼の方が好きだ。
キラキラしてて、先が読めないのを楽しみに変換してる。
そっちの方が、太陽が光って見える。
名前通り、“太陽”になる。
「美味しい?」
「美味しいよ!最近病院の食事にも飽きてたとこだったし、余計美味しく感じる!」
「良かった」
ホッと胸をなで下ろした瞬間、外の方からポツポツと音が聞こえてきた。
―――雨だ。
今日は少し降るって言ってたから、一応傘は持ってきてはいる。
ここ最近、降ってなかったもんなぁ。
「…空が泣いてる」
「え?」
「…ううん、何でもない。明日は晴れるように願っとこ。秘密でまたサッカーやりたいし」
「コラッ!…でもまぁ、晴れてはほしいからてるてる坊主でも作っちゃお」
「いいね。僕も作る」
あーした天気になーあれ
(「輪ゴム貰ってくるね」)
(「うん」)
(…晴れたら、天馬は来るかな)
(また一緒にサッカーがしたい)
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