vivi


昨日、剣城が女の子と一緒に帰っていたのを見た。
最近一緒に帰れないって言ったのは、女の子と一緒に帰るためだったんだね。
俺は、もう、フラれたのかな。

“昨日どうして女の子と帰ったの?”なんて言葉は呑み込んだけど、ずっと後に付いてきた。
それでストレスが溜まり始めて、つい剣城に“剣城なんか知らない!大嫌い!”って言ってしまったんだ。
一度言ったことは、取り消せないのに。それでもおれは謝ろうとしたけど、どうせ嘘だって思われるし、物を使えばこんなんで許せるかって思うだろう。

だから、ちょうどいいものは一つも無かった。何も出来ないなんて、不甲斐ないな、おれ。

けどね、愛してるって事はホントだよ、剣城。でもおれ、もう明日から消えるね。
この剣城の気持ちが微睡む前に、この憧れていた雷門を、剣城を置いて消えるから。


そう決めた夜、剣城に手紙を書くことにした。最初に剣城が来たことから、ホーリーロードの優勝まで思い出した。でも、紙に書くことなんて何もなくて、真っ白のまま。

本当は、今すぐ会って伝えたい。けどその言葉は嘘で、おれは嘘まみれで、嘘で剣城を汚してしまう。

“愛してる”って伝えたい。明日になったら今日のおれ等は死んじゃうけど、おれが消えるって話は忘れて。そしたらもう言いたいことは無いよ。


おれはいつの間にか眠っていて、夢を見た。雷門のみんなが溶けていく。サッカーが、消えていく。琥珀色に包まれて、おれは泣きながら一人でボールを蹴った。
嫌な夢で、目が覚めた。サスケは起きていたようで、静かにおれを見ていた。

なんとかなるって言ってたおれでも、キャプテンは務められたし、いつも剣城の横に居れたんだ。


翌日、おれは早めに学校に行って、冬海校長と金山理事長に退学届けを出した。先生達は無言で受け取ってくれて、教室に行って荷物を纏めた。
そのまま部活に行って着替えてると、剣城が来た。おれは決めたんだ。剣城と剣城への気持ちを雷門に置いていくって。


「…剣城。愛してるよ」


ボソッと剣城に聞こえないぐらいの声で言った。当の本人に聞こえてるか聞こえていないかなんて判らないけど。

抱き締めて、強く抱き締めて、おれは震えてた。でも剣城は何も言わずに抱き締め返してくれた。“ごめんね”さえ言えないおれは、情けない。


部活が終わった後、すぐに校門に行って校舎を見上げて呟いた。


「…さよなら…」


愛してるよ、剣城。
ごめんね、剣城。
折り畳まれて置いたとユニフォームとキャプテンマークを見て、君がなんて思うかなんて知らないけど、おれはずっと剣城が好きだよ。
嫉妬だけで辞めるなんてくだらないけど、それほど愛してた。だから、君を手離した。

考えて考えて出た結果ね、おれは解ったんだ。

さよならだけが、おれ等の愛なんだ。


vivi


(さよなら雷門)
(さよなら剣城)
(ずっとずっと愛してる)




原曲 vivi / 米津玄師 様

この世界のメロディー!!様に提出




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