何気ない幸せジンクス


剣城は、どうしておれに『結婚したい』だなんて言ったんだろう。
高校二度目の冬、ボーッと窓の外を見て思った。
おれと剣城は、ホーリーロードが終わってから付き合いだした。
そのまま順調に行って、同じ高校に入った。
でもクラスは離れ離れになって、雷門の時おれと剣城のことを解ってくれた仲間は、今は信助と葵だけ。
でもその信助と葵もクラスが離れて、休み時間ぐらいしか相談とか出来ない。
しかも公には出来ないから、屋上でコッソリとかしか話せない。

剣城は週二で一緒に食べてくれるけど、それ以外は新しい友達とだけ。
クラスを覗けば楽しそうに話してる。
こないだなんて、体育館の裏に呼び出しされてて、可愛い女の子に告白されてるのを見た。
後から聞けば、『断るに決まってんだろ』って言って、小突いてきた。
その後、だっけ。
『俺が好きなのはお前だけだ。お前を幸せにするのは俺だけだ。だから―――』


「いつか結婚してくれ…か」


おれを不安にさせないために言ったのかな。
それとも唐突に出ちゃっただけなのかな。
思い出した時は少し二やついちゃったけど、おれの為を思って言ってくれたのかと思うと、申し訳なく思っちゃう。
それに、ホントに相手がおれでいいのかなぁ?

うーん…剣城の真意が解らない…。


「てーんまっ。どうしたの?」

「あ、葵…」

「あ、やっぱり言わないで。剣城君のことでしょ?そんなことだろうかと思ってさ、雑誌で見つけたんだ!」

「何を?」

「どの学校でも出来る、夢が叶う方法!試しに二校でやったらしいんだけど、カップルが幸せになってね、もうそれがすっごい広まっちゃって!天馬もやってみなよ!」

「う、うん」


葵にすごく薦められて、教えてもらった方法。
すごく、簡単だった。
ただ、チャンスは一日に一回。
出来ることなら早くに確認したい。
剣城が好きなら、尚更。


今日珍しく、部活が休みでよかった。
もし部活だったら、明日も明後日もずーっと部活だったら、確かめられなかった。


「つる、ぎ」

「なんだよ、しどろもどろになって」


放課後、剣城を屋上に呼び出した。
もう下校する生徒は、部活をやっている人達だけだろう。
野球部のボールを打つ音、吹奏楽部の音、色んな音が遠くで聞こえる。
今一番聞こえるのは、おれの心臓音だけ。
すごく大きく聞こえる。

やらなきゃ。
葵に教えてもらったの、やらなきゃ。
日が暮れて、出来なくなる。


「きょっ…京、介…」

「!」

「ずっと好き!」

「いきなんっ…」


『夕日が二人を照らした時に、相手の名前を言って告白してキスすると幸せになるんだって。ありきたりっぽいけどね、効くんらしいよ。ただし両思い限定!』
葵の言葉を思い出す。
恥ずかしいけど、おれはずっと剣城が好きっていう自信はある。
剣城がどう思ってるのかは判らない、けど、それでもおれは剣城が好き。

少し長くなったキスを終わらせると、剣城が驚いた顔をして、口を押さえていた。
やっぱり、駄目だったのかな…。

押さえきれなくなって、おれは泣き崩れてしまった。


「お、おい!泣くなよ!」

「だって…だって剣城とこれからもっ…一緒に居たい…っから…」

「…もしかして結婚したいって言ったの疑ってたのか?」

「同っ、情だったらど、しようって…思って…」

「んなわけねーだろ。日本じゃ出来ねーけど、事実婚は出来る。それでも物足りなかったら外国に行って結婚する。それ以上にお前が好きだ、天馬」


ごめん。ごめんね剣城。
多分おれ、本当に不安だったと思うんだ。
困らせてごめんね。

でもおれの気持ちは、本当だから。


「帰るぞ」

「うん」


葵、ありがとう。
おれ、幸せになるよ。


『…………あとね、天馬。相手の告白を聞いて手を繋げば完璧だよ』





(繋いだ手が暖かい)
(この温もりをずっと感じたい)




京天病様に提出



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