私も貴方もフィーバー中
「…なんで折角の休みに先輩と二人でゲーセンなんですか。俺吐きそうですよ」
「しょうがないだろ。神童達、用事が出来てドタキャンしたんだから。吐くなら俺の居ないところで吐けよ」
久し振りの休み。
神童や天馬達を誘って隣町に行って遊ぼうという話になった。
だけど、神童は急にピアノのレッスンが入ったとかで来れなくなるし、天馬は木枯らし荘で何かあったとかで来れなくなった。
西園は天馬のヘルプで来れなくなったしな。
そんなわけで狩屋と二人なわけだが。
嫌ならとっとと帰ればいいものの、狩屋は一向に帰る気配が無い。
素直じゃないよなぁ。
「せんぱーい」
「何だ?」
「クレーンゲームで何か取って下さい」
「お前…自分でやればいいだろ」
「俺下手なんて全然取れないんですよ。先輩ならきっと取れるでしょうし」
…相変わらず、憎たらしい奴だな。
素直じゃない上に、我が儘だし。
俺にだけ素なのは未だに解らないが、多分俺を嫌ってるからだろう。
今も無理して、着いてるだけだろうし。
「で?何が欲しいんだ?」
「これですこれ。今俺の中で流行ってるんですよ。あと一色で揃うんですけど、中々取れなくて…」
「……狩屋、他の色はお前が取ったなら最後の一色も取れるだろ?何でわざわざ俺に取らせるんだ?」
「えっ?あ、いや、その…」
何でそこでたじろぐんだ。
自分で墓穴を掘ったくせに…。
一回一色足りないストラップを見せてきたが、相当な量だった。
お前ここまで取れるなら、最後まで自分でやれよって本気で思ったな。
「…最後の………最後の一個は、先輩に取って…ほしくて…」
「それならそうと早く言えばいいのに」
「はっ?」
なーんだ、そんなことか、と思いながら、クレーンゲームのお金を入れるところに200円入れた。
ほーんと、素直じゃないな。
耳まで真っ赤にして。
後でいじめてやろーっと。
よく狙って、ボタンを順に押す。
こういうのって、引っ掛けると取れやすいんだよな。
「あっ、落ちた」
「…ッチ」
この大きさは、案外難しいな。
こんなの一発で取れたら凄いぞ。
狩屋はよくこんなの沢山取れたな…しかも飽きずに。
「あっ、もうちょっと右ですよ!」
「左だろ!」
「あぁっ!また落ちたじゃないですか!」
「お前が勝手に押すからだろ!!」
コイツ…!
人に取らせておきながらポチポチ押しやがって!
俺の金が財布から飛んでくっつの!
「………やっと…取れた…」
「ありがとうございます。はい、先輩、次はこっちですよ」
と言われて連れて行かれたのは―――
「プリクラ?」
「折角なんで、せっ…先輩との思い出を作ってあげようかなって…」
「………ははっ。撮ったらお前に落書きしてやるよ」
「なっ…!どういう…」
「“俺は霧野先輩が好きです”ってな。お前素直じゃないし」
「有り得ない…」
「とか言う割には真っ赤」
「黙ってください!!」
私も貴方もフィーバー中
(「好きで悪いんですか!!」)
(「あ、俺のこと好きなんだ」)
(「うぐっ…」)
(「お前馬鹿だな。可愛いけど」)
(「マジで黙っててください…」)
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