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――ぴちゃんっ。
何かが岩の上に落ちる音がして、俺は足を止めた。
後ろをついてきていたカイリューが頭上を見る。その瞬間。

滝のような水が頭上から激しく降ってきた。

すぐさまカイリューをボールの中へと戻すと俺は駆け出した。

この先に洞窟があったはず。
少し行くと予想通り洞窟が見えてきた。そこへと逃げ込むとふぅ、と息をついた。
山の天気は変わりやすい。ちなみに昨日は雪が降っていた。
雨の水で重たくなったマントを絞りながら考える。
これはしばらく止みそうもない。さて、どうするか。

少し軽くなったマントを羽織り、ポケギアを見る。時刻は午後18時。
少し経てば雨は優しくなることを祈りつつ、休憩に入った。


――30分後。残念ながら俺の祈りは空には届かなかったようだ。
逆に酷くなる一方だ。こんな雨は始めてだ。
カイリューには悪いが、この雨の中帰るしかないようだ。

「すまないな、カイリュー」

ボールの中にいるカイリューに言うとカイリューは気にするなとでも言うような表情をした。

洞窟を出る。途端、多量の雨が襲う。
カイリューを出し、背に飛び乗り「行くぞ」と声をかけた。
その言葉にカイリューは頷き、翼をはためかせた。



家に着き、カイリューを急いでボールへと戻す。
こんな雨の中、ご苦労さま。
ふぅ、息をつきドアノブに手をかける。と、頭がズキンと痛み、思わずドアノブにかけていた手を頭へと移動させた。
雨に打たれたせいか。若干足元がおぼつかない。今日は早めに休むか。
再度ドアノブに手をかけ――首をかしげた。

鍵が閉まっている。いつもなら開いているはず。
それにリビングなどの部屋に明かりがついていない。

「レイム…?」

何か、嫌な予感がする。
懐から鍵を取り出し、家へと入る。

「ただいま」

そう言うが返事はない。
ふらつく体でリビングへと入る。
しかし、明かりはついておらず真っ暗だった。

「レイム」

その後も他の部屋を探したが、レイムはいなかった。
リビングに戻ると壁に寄りかかり、あまり働いていない頭で必死に考える。

――どこに。
そう呟き、ふと視線にテーブルが飛び込んできた。
そして気がついた。
いつもテーブルの上に山積みにされていた本の山がなくなっていることに。

「――!」

あぁ、そういうことか。
レイムは出て行ってしまったんだ。俺がちゃんと理由を話さないで留守ばかりするから。

ふらつく足をなんとか前へと動かし、玄関のドアを開ける。
――まずい。視界が揺らぎ始めた。
けれどここで立ち止まっているわけにはいかない。レイムに会う。会ってどうするかは分からない。ただ、会いたい。俺を見て彼女はなんと言うだろうか。

「――カイリュー」

閉めたドアに寄りかかりながらボールを投げる。
現れたカイリューは俺を見るや表情を曇らせた。目が大丈夫かと訴えている。
…そんなに今の俺は酷いのか。

「エンジュシティに…行くぞ…」

レイムはそこにいる。もしかしたらいないかもしれない。だが、確率でいうのなら自分の家に帰っている確率が高い。

おぼつかない足でカイリューに近寄り、なんとか背に乗る。
カイリューは一瞬心配そうな表情で俺を見たが、ゆっくりと翼をはためかせると大雨の中を飛び始めた。いつもより飛ぶ速度が早いのは気のせいだろうか。

「レイム…」

ゆっくりと瞼を閉じる。
ごめんな。俺は自分のことしか考えていなかった。

彼女に会ったらなんと言えばいいのだろう。
考えるたびに頭がズキンと痛むのは熱のせいか、それとも…――








(すまなかった、と言えば許してくれるだろうか)(そう考えた自分が酷く嫌になる)








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