3


――負けた。
その事実を受け入れたくなかった。
今までの四天王の大将としての、ドラゴン使いとしての誇りが一気に砂のように崩れていく。

「くそっ…」

彼が部屋を抜けていくのを見届け、俺は両手を握りしめた。

何が足りなかった?俺と彼は…何が違った。
それを見つければ、俺は…ーー

そこまで考え、決心した。一度初心に戻ろう。今の地位もすべて捨てて。



俺には恋人がいる。名前はレイム。
エンジュシティ出身の元ポケモントレーナー。今は旅をやめて俺の故郷――フスベシティにある俺の家に住んでいる。

帰りの遅い俺を待っていてくれている優しい彼女だ。

「――あっ、お帰りなさい、ワタル」

家のドアを開けるとひょっこりとレイムがリビングから顔を覗かせた。
「ただいま」と返すとレイムは何も言わずに俺の前から姿を消した。

…ここ最近、徐々に会話が少なくなってきている。
少し前まではどうして俺が出かけているのか、しつこく聞いてきたのだが俺は答えなかった。彼女には四天王を辞めたとは言ったが、理由までは話していなかった。まだ理由を話すには早い。もっと強くなってから言おうと考えていたからだ。

レイムが何を思っているのか、俺には分からない。だが、ずっと待っていてくれると信じていた…いや、自分に言い聞かせていた。




――いつもの朝。

テーブルの上に紙を置き、マントを羽織って家を出た。
修行場所はシロガネ山。あそこに住んでいる野生のポケモンたちは強い。そして地形的にも修行にはうってつけの場所なのだ。
ボールから飛び出した相棒のカイリューの背に飛び乗り、山を目指す。
コイツも2年前とは比べ物にはならないほど成長した。そろそろセキエイ高原へ行こうかと考えている。

――俺の目標はチャンピオン。頂点に立つことが目標だ。
これを達成することが出来れば世界の人々にドラゴンの強さを証明できる。そして何よりもレイムの嬉しい表情が見れるに違いない。
惚れた女にはかっこいいところを見せたいと思うものだ(バトルをするのはカイリューたちだが)
…目的地が見えてきた。これから修行の始まりだ。













人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -