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私は今日、オクラを買った。
一袋100円。何て安いんだろう。
いいわけではないけれど、断じてあの人に影響されたわけではない。

私の手にはいつの間にかきゅうりが1本握られていた。
一本69円。安いんだろうか?いやきっと最近では安い方なのだろう。
断じてあの人の影響ではない。

ブロッコリーは半分で100円、高いけどゴマドレかマヨネーズで食べるのが一番おいしいよね。
なんだかブロッコリーも食べたい気分。

レタスを食べていると草食動物になった気分になるけれど、芯の部分も瑞々しくておいしい。
高いけど、でも食べたいなぁ、レタス。

あ、79円だって!ピーマン!ピーマンも買っちゃおう!
ピーマンを焦げ目ができるまで焼いて、それにマヨネーズと醤油をかけるとおいしくて、私これでピーマン克服できたんだよね。懐かしいなぁ。ピーマンの肉詰めも大好物。

そう、私は好きだから買うの。断じて断じてあの人の影響じゃないの。
それなのに。


「なぁ、お前の買い物かご植物園になっとるで」


目の前にはあの人、一氏ユウジくんがいて、少しゆるくなった緑色のバンダナがずるりとずれていた。


「何梓月ってべじたりあん言うやつか?」
『いや、ちょっと、えっと、そう、そう!冷やし中華!冷やし中華作ろうと思って!』
「冷やし中華ァ?冷やし中華にピーマン入れるんか」
『いや、それはちょっと違う、かも、だけど』
「……なんやねんそれ」
『それより!一氏くんは?何?買い物!?』
「お?おん、おかんに頼まれてなー今日は冷やし中華らしいねん。夏真っ盛りの時は一度も作らんかったくせに。もう夏終わっとるっちゅーのに変なおかんやで」


言うても。
もう一度私のカゴの中を覗き込んだ一氏くんは、口角を上げて、お前もうちのおかんとおんなじやな。と言ってオクラをつついた。


「うちのおかんと気が合うかもしれんな」
『えっ』
「いやなんでも。あ、梓月のせいでもうこないな時間やん、はよ帰らな」


ずれたバンダナをずりあげながら、そそくさと去ろうとする一氏くんのカゴを引っ張って、私はその中にオクラを放り込んだ。不思議そうな顔をして立ち止まる一氏くんに、誕生日おめでとう、と言うと、真っ赤になった一氏くんに、ばあか、と言われた。

そう断じて断じて一氏くんの影響じゃない……わけないじゃない。
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