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いた。

木の茂みに隠れていた水色と白のストライプのパンツが姿を現す。
ジローくんがいた。こんなところにいた。
そっと忍び寄って、ジローくんのそばにしゃがみこむ。制服にパンツはさすがにないよなぁ、なんて思いながら、パンツのゴムをひっぱって、ぱっちん。それでもジローくんは寝たまま。寝返りを打って、仰向けになって、腕で目を隠した。


『ジローくん』
「……」
『ジローくん……』
「……」
『ジローくん、泣いてもいいよ』
「……っ」


こらえきれなくなった嗚咽が口からこぼれた。
やっぱり、ジローくんは泣いていたんだ。誰にも内緒で、こんな誰にも気づかれないような場所で、ジローくんは一人で泣いてたんだ。
腕をどけると、涙でぐしゃぐしゃになった顔を背ける。見ないで、と言い続ける声は震えていた。


「あとべ、髪、無くなっちゃった」
『うん』
「終っちゃった」
『うん』
「ホントの、ホントに、終わっちゃったC」
『……うん』


雨が降って、翌日に持ち越された、運命を決める一戦は、跡部くんが負けて終わりを告げたのだ。誰もが息を飲む試合の中、青学の1年生を相手に、心からテニスを楽しみながら、跡部くんは負けた。
その時、泣き声であふれる観客席から、ジローくんを見つけたんだ。きゅっと唇を噛みしめて、ただ、跡部くんの姿を見つめていたジローくんを、私は見つけた。誰もが泣いている中、ジローくんだけは泣いていなかった。


「俺、まじまじすっげー悲しかったけど、泣かなかったC」
『うん、知ってる』
「俺、偉いでしょ」
『うん、偉かった』
「だからさ」


今だけは泣かせてよ。
そう言うジローくんを引き寄せて、肩に涙を吸い込ませながら、ジローくんが泣き止むまで、私はジローくんの悲しさを受け止めていた。
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