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昼休みの屋上に、丸井はいた。
心地よい風に髪の毛をそよがせながら、何をするわけではなく、寝そべってガムを膨らましていた。私の存在に気付いているのか気づいてないのか、丸井は、もうすぐ卒業だな、なんて一人ごちた。
もうすぐって、まだ1年先の話なのに。
中学の時と違って高校を卒業すれば、そのままエスカレーター式で進まない学生も出てくる。本当にほんの一部だけれど、その一部に私も含まれていた。第一志望におちたとしても、多分、私はここの大学に進む可能性は無い。
その理由は、なんとなくわかってもらえるだろうか。
私と丸井が仲が良い事が、物語っている。


「勉強はどうなんだよ」
『ぼちぼち』
「そんなんじゃどっこもうかんねーぜ」
『わかってるよ、だから必死』
「あっそ」


こうやって憎まれ口を叩くけれど、決してその勉強をやめろだとか同じ大学に行こうと言わないのは、彼なりの優しさだと理解している。
空を睨み上げていた丸井は、その目をそっと閉じた。私だってみんなと、丸井と、同じ大学に行きたかった。でも、それを許さない空気というものがいつもどこかにあって、私はそれに耐えきれなくなってしまったのだ。
小学校までは許されたのに。
丸井と仲良くするのは小学生まではなんともなかったのに、多感な時期を迎える中学生、高校生になってとてもめんどくさい感情がみんなに芽生えるのだ。男女間の友情なんてありえないでしょ、なんて言いながら。中学、高校と進むにつれて、テニス部という存在としてでも有名になっていった幼馴染との間に生まれた距離は本当に果てしなく遠くなってしまった。そこから逃げ出したのは私で、何もかも気づいている丸井は、それでも何も言わなかった。


「まぁ、頑張れよい」


五月間近の暖かい風に乗って、丸井の言葉が私の耳へと届く。
丸井は、私の事を一度たりとも見ることなく、その場から去って行った。
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