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『謙也さん』


偶然見かけたテニス部の先輩、謙也さん。
その横には、財前先輩もいた。邪魔者め。


「なんや梓月、買い物か?」
『お母さんが買い忘れちゃったらしくて』


ほらこれ、ケチャップ。私は実物を取り出すと、財前先輩はため息を吐いた。なんで?


「もっと色気あるもん出せ。女やろ」
『え、パンツでも出せばよかったですか』
「ばっ、あっほ梓月!んなもんこんな公共の場で出すな!」
『今謙也さんバカって言おうとしませんでした!?大阪の人間にバカ言うんは死活問題ですよ!?』
「つっこむとこはそこかバカ」


ああもう冷たい。そんなんだから、できた彼女も一日で逃げてくんだ。そんなことを頭の中で言ってたら、すっごい顔で財前先輩ににらまれた。なんで?


『お二人はデートですか?』
「は、んなわけないっちゅー話や」
「そないな冗談やめてもらえるやろか。謙也さんとデートなんて虫唾が走る」
「そこまで?」
『謙也さんじゃなければいいのか……』
「そこで本気のボケかまさんといてくれる!?」
「部活の備品買いに来ただけやわ」


ふうん。通りで。彼らの両手に重そうな荷物がたくさん。グリップテープに、粉状のスポーツドリンク、サポーター、テーピング……ん?絆創膏?包帯?


「あいつらグリップテープ買い行く言うたら、自分らの買い物までおしつけよって」
『包帯とか絆創膏、これ白石先輩ですか……』
「まぁ、絆創膏は俺らも重宝しとるから別にええけど、包帯は自分で買いいけよって感じやろ?しかもこんな大量に。いらんやろ。ミイラ男にでもなるつもりかあいつ」
「年中ハロウィン男っすからしゃーないっすわ」
『ケア用品ばっか。白石先輩からのおつかいがほとんどと見た』
「流石健康ヲタ」
「ほんまやなぁ〜」


ふうんそっか。先輩たち大変そう。ケア用品が入った袋なら私でも持てそうだし。手伝ってあげようかな。


『一つ持ちますよ?』
「えっ」
「いらんわ」
『いらんとは!』
「財前の言葉がいかん!女子には持たせられんってことやろ、な?財前?」
「……」
「なんで黙る」
『いや、別に私大丈夫ですし、ケチャップしか装備してませんし、学校まででしょう?』
「せやけど」
『どうせ方向一緒ですし、何か一つ持ちますよ』
「えー……でもなぁ」
「持ってもらえばええやないですか弱足さん」
「誰が弱足や」


フリスビーを待つ犬のように、謙也さんの持つ荷物を待っていれば、観念したように一つだけ持たせてくれた。わあい!ちょっと困らせちゃったけど、役にたてたぞ!
嬉しすぎて鼻歌歌いたくなったけど、ものごっつい顔で財前先輩に見られていたので辞めた。謙也さんと並んで歩こうと思って、一歩踏み出そうとしたら、私と謙也さんの間に財前先輩が入ってくる。なんなん?なんなん財前先輩。財前先輩を睨み上げたら、呆れ顔で見返された。なんか屈辱。


「……お前」
『な、なんですか』
「謙也さんに気ぃありすぎやろ」
『は、そんなわけ』
「謙也さん騙せても俺は騙せへんぞ」
『す、好きだからなんだってんです!』
「梓月のくせにむかつく」
『はい!?なんですかそれ!』
「……なんでもないわ」


なんなんだなんなんだ財前先輩。
ぶわあっと顔に血がのぼってきて、私もだけど財前先輩もちょっと顔赤い気がするし意味わかんない。
あーもう、うそだうそだ!なんかドキドキしてきちゃった私を許してください謙也さん!
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