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ようやく、この時が来たのだ。
お小遣いをためて幾星霜、ぶたさんのお腹にたーっぷりつまった夢と希望をパリーンと割って、新たな夢を私のお腹につめこむために、ここに来た。
四天宝寺中、たくさんの人が談笑しながら箸をつつく学食。ぎゅっと握りしめたお金を、私は、にこにこと笑って迎えてくれるおばちゃんに叩きつけなければならないのだ。
さぁ、さぁ!いざ、行かん!


『おばちゃん、くいだおれ丼くださっ「おばちゃーーん!くいだおれ丼一つ!おまけもつけといてや!」
「はいはい、くいだおれ丼ね」


うわ!割り込みかよ!何年だ!?ていうかせっかくのモチベーションどうしてくれんの。あーもう。そんなことはどうでもいいんだった。私はくいだおれ丼を食べにここに来たんだから。今は、割り込みだのなんだの気になら「はい、くいだおれ丼最後の一個だよ!」あああああああああああああああああああああああああああ!


「おばちゃんおおきに!放送室から走って来てほんまによかったわ!」
「何言うてんの。謙也くんいっつも走って来よるやないの」
「せやった!せやった!あっはっは!」
『あっはっはじゃねえええええええ!』


思いっきり助走をつけて、思いっきり割り込み野郎に飛び蹴りをくらわしてやった。くいだおれ丼?はっ、んなもん宙に浮いて……浮いて!?


「ばっかお前!」


何が起こったかわからなかった。私の飛び蹴りによって宙に舞ったくいだおれ丼が、何故か元通り割り込み野郎の手の上にしっかりと置かれてあったのだ。頭の中は疑問だらけなのに、周りの人は拍手していて、さらに疑問だ。こいつ一体何者なんだ。割り込み野郎のくせに。


「浪速のスピードスターは俺のことや!」


浪速のスピードスター?知らん、そんなん初めて聞いたし。ドヤ顔されてもよくわからんし。そんなことより私のくいだおれ丼奪った罪、許し難し。


「ってお前か!俺に飛び蹴りくらわしたんわ!もう少しでこのくいだおれ丼お陀仏やったんやで!」
『だってあんたが割り込みしたからじゃん!』
「はぁああ?おらんかったやろ!」
『いましたー!くいだおれ丼くださまで言いましたー!なのにそこに横入ってきたのはあんたでしょうが!』
「はっ、そんなん買ったもん勝ちっちゅー話やろ」
『よくそんなこと言えますね!私がこのくいだおれ丼のために衣食住満足せずに生きてきたっていうのに!よく!そんなことが!言えますね!』
「そんなん知らんし」
『はっ!さては貴様金持ちだな!?だから貧乏人の気持ちがわからんとそういうことだな!?』
「いや、別にそんなんやないし……」
『うーわだからやなんだよ金持ちはよぉ!親からもらった金を好きなように使い、くだらんもののためにさばき、そしてまた親からもらうんやろ?はーその神経の図太さ!これだから金持ちは嫌いなんだ!』
「いや、だから、そんなんちゃうって」
『こんなところで謙遜?謙遜のし場所間違えてません?それとも皮肉ですか?は?』
「いや、ね、だから、あの」
『ありえへん。もーありえへん。呪う一生のろっんぐふっ』


この割り込み野郎何してくれたと思います!?手に持ってたくいだおれ丼掴んで、私の口に無理やりねじ込んできたんですよ!?あり得ない!あり得ない……あり得ないくらい……


『んっま!』
「せ、せやろ?」
『くいだおれ丼うっま!』
「せやから、な?機嫌直してや、な?呪うんは堪忍して」
『もう一口!もう一口!』
「あ、ほら、はいっ」
『んーっま!』


指についた米粒も一つ残らずぺろり。そこまでしちゃうほどうまい……流石四天なんばーわん名物、くいだおれ丼……。くいだおれ丼さまさまや。私の怒りはどこへやら。ふっとんでしまわれた。


『あの、さっきはちょっと大人気ないことしてすみませんでした』
「いや、俺も割り込んでしもたし」
『念願のくいだおれ丼だったのでつい……』
「よ、ようやっと食えてよかったな!」
『あ、ああ、すいません、めちゃくちゃにしようとしたり、食べちゃったり……』
「別に大丈夫、大丈夫やから」
『あと、どこの誰ぞとも知らず……』
「あ、あーえっと、3年の忍足謙也です」
『ああ!3年の忍足さん!……えっ、忍足……えっ!ええええ!』


お相手はまさかの有名人、放送室のスターDJおしたりでした。
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