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先日、私は立海大学附属高校を卒業した。

泣きじゃくるクラスメイトの中、私もつられて泣きながら、お互いに写真を撮る。その行動ですら最後だって思わせられて、余計に泣けてくる。
そんな中、私に近づいてきた一人の男子生徒がいた。
幸村くん。
クラスメイトの幸村くんだ。


「梓月さん」
『幸村くん、どうしたの?』
「いや……俺とも一緒に写真撮ってくれないかな」
『私のカメラで大丈夫?』
「うん、カメラ忘れてきちゃったし」


うっかり。そんな声が聞こえてきそうな顔をして、幸村くんは私のカメラを友人に渡した。
なんだか、近いような。私のためにかがんでくれたせい、だけど。
人気者の幸村くんと写真を撮るだなんて、思ってなかったし、顔もぐしゃぐしゃのままで、一緒にうつるのなんて恥ずかしい。だけどもう、そんなことも言えないまま、私は幸村くんと写真を撮った。
そして、幸村くんは、この写真を現像して5日にテニスコートに持ってきて、なんて言って、再び男子の輪に戻って行ってしまったのだ。

そして、今日がその5日、テニスコート。
誰もいないテニスコートを眺めていると、ふいに部室の方から足音が聞こえてきた。
幸村くんだ。
見たことのない幸村くんの私服姿はとてもかっこよくて、思わず見とれてしまった。


「やぁ、梓月さん」
『……幸村くん』
「精市でいいよ」
『せ、精市、くん?』
「写真持ってきた?」
『あ、うん、これ』
「ありがとう、とてもうれしいよ」
『どういたしまして。じゃあ、私はこれで』
「あ、待って」


踵を返した私の腕を捉えて、幸村くんは、お返しに、と言いながら手のひらに何かをのせた。なんだろうと、見てみると、それは制服のボタンだった。


「ずっと、君に渡したかったものなんだ」
『ボタン?』
「俺の第二ボタン」
『第二……それって』


俺の、心をあげるよ。
そう言って、幸村くんは笑った。
私は、写真の代わりに、なんだかとんでもないものをもらってしまったのだった。
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