▼ ▼ ▼

『私はさ、ちょうたろうが氷上で踊ってたとしても驚かないよ』


私は夜更かしをしつつ、フィギュアスケートの中継を見ながら、ちょうたろうにそう言った。


「いきなりどうしたんですか」


別に。
どうしたってことはない。ただのイメージだ。
音楽にも長けていて、芸術性もあるちょうたろうなら、フィギュアスケートをやっていたとしてもおかしくないだけの話。ただそれだけだ。


「でも俺はテニスが好きです」
『そんなのわかってるよ』
「じゃあどうして」


どうしてってこともない。
テニスが好きなのも、テニスを一番に考えているのも知ってる。不満そうに食い下がろうとするちょうたろうを無視して、私は再び意識をフィギュアスケートに向けた。日本人の選手が、綺麗なフォームでくるくると回っている。
もし、ちょうたろうがあんな風に氷上で踊っていたらどうだろうか。
きっと綺麗で、この世の物ではない感じがするのに、力強くて、優しくて、やわらかくて。とてもとても素敵な選手になるに違いない。
でも、私はきっと、そんなちょうたろうに心は奪われないだろう。
私は、テニスをするちょうたろうに惚れたのだから。


『私はちょうたろうが好きだよ』
「う……わ!な!なんですかてんさんいきなり!」


だから、なんだってことはないのだ。
私はテニスをするちょうたろうが好き。それだけの話。
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -