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降りしきる雪で見えなくなってしまいそうな背中を必死で追いかけた。
追いかけても追いかけても、追いつけないその背中は、彼がより高みを目指している人だったからだ。

日吉先輩。

そう呟いてみたけれど、彼は振り返ることもなく、そのまま進んでいく。

待って。

叫んでみたけれど、それでも彼は気づかなかった。
だから、必死で走って、口の中に雪が入っても、目の中に雪が入っても、冷たい空気に息ができなくなっても、我武者羅になって走って、彼の袖を掴んだ。
それでも、彼は前を進み続ける。
私を振り払うように。長い前髪で顔を隠して、私を見てしまわないように。
合格通知を握りしめた私の手は、ぎゅうぎゅうに握っていたため真っ赤で、彼の袖を掴む手も、それと同じくらいに真っ赤になっていた。

日吉先輩、私合格したんです。

日吉先輩がいる学校に。合格できたんです。

やっと追いつけたんです。

先輩。

雪のせいか、濡れていた袖は、冷たくなっていた。

先輩。

ずっと、会いたかったのに。

私はあなたの背中だけを追って来たのに。

それなのに、まだ、先輩は私の前を行くんですか。


「まだ、お前は追いつかなくていい」


彼が一瞬だけ、私を見た気がする。さっきとは違って、彼は私の指を優しくほどいていった。そして、先輩は、また前だけを向いて歩きだす。
雪の勢いはとどまらないどころか、激しさを増す一方で、先輩の姿を隠していった。

先輩の隣に立つまで、あと、何十年かかるのだろう。
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