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隣の席のリョーマくんは、授業中いつも眠そうにしている。
今日も例外ではないようで、でも、いつも以上にうつらうつらしている気がする。前を見ると、英語の先生が目をきらりと光らせたように見えて、怖くなった私はリョーマくんを起こそうと、肩を叩いた。目をこすりながら、リョーマくんは私を恨めし気に見上げた。
『寝不足?』
「……そんな感じ」
『先生見てるよ』
「当てられても答えられるし」
と言ったと同時に先生に指名されたリョーマくんは、すらりすらりと答えてのけた。
流石帰国子女。
すごいなぁ、なんて見てたら、私まで当てられてしまった。(もちろん答えられなかった)
「夜中」
席に座って、ため息を吐くと、また眠りについてしまいそうなリョーマくんが口を開いた。
「先輩たちの誕生日メールで眠れなかった」
誕生日、誰の。と言おうとしたところで、はっとする。
『リョーマくん、昨日誕生日だったの!?』
「そうだけどっていうか声大きいよ、梓月」
『ご、ごめん』
慌てて周りを見渡したけれど、授業に集中してる人とか寝てる人ばっかりで、私の声には気付かなかったらしい。先生も授業をどんどん進めている。
「自己紹介の時言ってなかったっけ」
『言ったかもしんないけど……覚えてないよ』
「……ふうん?」
『……?』
むっと唇を尖らせたリョーマくんは、私を手招いた。どうやらもっと近づけってことらしい。私は素直に従って、机を静かに寄せて、リョーマくんの顔の近くに顔を持っていくと、そのままセーラーの襟をひっぱられて、バランスを崩したあげく、私のほっぺたにリョーマくんの唇が触れた。
えっえっえっ。
「まぁ、これで許してあげるよ」
『ななななな何を!?』
勢いよくリョーマくんから離れて、もう一度周りを見渡したけど、みんな寝ていて、ほっと安堵した。一番後ろの席でよかった。
リョーマくんは意地悪げに笑いながら私を見て、机に再びつっぷした。