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「てん!とりっくおあとりーと!」


朝一番、校門をくぐった私を見つけた金ちゃんが放った第一声で、私は校内のこの騒ぎに納得がいった。
そうだ、今日は年に一度のハロウィン。
お祭りごとが大好きな四天にとって、今日のこの日も学校総上げで楽しまなあかん!らしい(一氏先輩談)。
それはともかく、きらきらとした目で私を一心に見つめる金ちゃんをどうしたらいいのだろうか。高校に入って急に伸びた身長は、私と比べるのもおかしい話となってしまった。もうオトナな金ちゃんだけれど、中身は変わらないのか、しっぽを振っているようにしか見えない。だが、あいにく、そんなかわいい彼にあげるものなど、何一つ持ち合わせてなかった。
不覚。誰か昨日教えてよ。


「もしかして」
『あー……』
「持ってないん?」
『……うん』


うそやろ、と言わんばかりの顔に申し訳なくなってくる。そうだよね、昨日もクッキーあげたし、一昨日もチョコあげたし、そりゃ今日も持ってくるだろうと期待してたんだよね。ごめんね、金ちゃん。そう思って、謝ろうと口を開いた時だった。


「やったあ!てんにいたずらできるやん!」


……は?
先ほどとはくらべものにはならないくらいに目を輝かせた金ちゃんが、私の両手をがっしりとつかんだ。


「てんへのさいっこうのいたずら考えとったから、ほんまよかった!」


てんのことやからな、なんか持っとってもおかしくないやん。だから最大の賭けやったんやで。
金ちゃんは私をそのままひきずって、どこかへと向かって行く。いやいやいやいやどこ行くの。何するの。さいっこうのいたずらって何。私の質問にはいっさい答えず、ぐんぐん進んで、見えてきたのは体育館倉庫。
いや、まさか、そんな。
放り投げられたマットの上で、ありがちなシチュエーションを思い浮かべて私は冷や汗を流した。


「さ、存分に楽しもな!」


金ちゃんは、後ろ手に、重い扉をゆっくりと閉めた。
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