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『ちょーっと待とうか!ね!待って!』
A〜?なんでだC?と不満そうな声をあげつつも、彼はその手の動きを辞めない。いやもう、ホントに、無理。
「じっとして」
『や、やだ』
「じっとしないと怒る」
『か、勝手に怒れば……!』
「怖いくせに」
私を見下ろしながら、ジロくんは笑った。なんだかその表情に、ぞわりと震えた私は、覆いかぶさろうとするジロくんの胸を全力で押す。細いくせにびくともしない体は、よりいっそう私に近づいてくる。
『や、やだやだやだっ』
「やーじゃないっしょ?」
『じ、ジロくん!』
「ん?」
『も一回心の準備をっ』
「やーだだC〜」
『う、ああああああ!』
「!?」
大きな声と共に、ぐんと伸ばした手は、ジローくんがすんなり私の前からどいたことにより、空をきり、そのままバランスを崩して、私はベッドの上から落ちてしまった。足だけがベッドにあるという変な体制のまま、ベッドの上のジロくんを見上げれば、ため息を吐いて頭をかいていた。
「もーてんー」
『……ジロくん』
「まじありえないC」
『……だってジロくんが』
「はいはい、もういいや、萎えちゃった」
『な、萎えっ!?』
「ほら」
怖い顔をしたまま、ジロくんは私に手を伸ばす。私が素直にその手を握り返せば、一瞬で私はまたベッドの上に座っていた。
「ほんっとどんくさい」
『ご、ごめんなさい?』
「なんで疑問形なんだC」
『ごめんね……?』
「……」
『……?』
ジロくんは、私から視線をそらし、もごもごと唇を動かす。それを覗き込めば、勢いよく私に視線を戻したジロくんに抱き着かれてしまった。
「あーやっぱ無理!」
『え』
「てんかわいすぎ!もうだめ!限界!」
『えっえ』
「第二ラウンド〜!」
『なっ、ジロくん萎えたんじゃっ』
「そんなのウソに決まってんでしょ〜!?」
『えええええ!』
全力の拒否も空しく、結局第二ラウンド、突入してしまいました。