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暑い日差しが照りつけるテニスコートを横目に、私は校庭に生い茂る雑草を抜いていた。
こんちくしょう、あの数学教師め。
宿題を忘れただけなのに、真夏の校庭にほっぽりだし、終わりが見えないほどの雑草を抜くという罰を与えやがって。


「梓月ー手が止まっとるばーい」


隣でだっさい長ジャージをまくっていた千歳は、慣れた手つきで草をどんどん抜いて行っている。お前どんだけ草抜きやらされてんの。と、つっこもうと思ったが、意外と千歳はこういうことを覚えている方なので、まじめに答えられてもめんどくさいだけだから、やめた。


『だるい』
「宿題忘れたんはどこのどいつね!」
『千歳』
「梓月もやろ?」
『そうだけど!でもいつもはちゃんとしてるもん!』
「はいはい、ゆうしゅーゆうしゅー」
『バカにしてる?』
「別にしとらんし、深読みしすぎばい」


どこにそんな余裕と元気があるのか分からないが、千歳はにこっと笑って、再び草へと目を向ける。


「にしてん、なかなかトトロは出てこなかね」
『は!?』
「トトロたい!トトロ!昔、草抜きしたらトトロ出てくるっち、ばあちゃんが言っとった」
『そんなわけ……』
「ないってわかっとるけど、でもそう思ってやったら楽しいやろ?」
『……千歳だけでしょ』


なんだそれ。喜べるのは千歳だけじゃん。ていうかそもそも、宿題を忘れた私たちがいけないわけで、楽しんだら意味ないんじゃないんだろうか。なんて言っても、きっと千歳は相手にもしてくれないんだろうな。


「ほら梓月、手止めんで一緒に探すばい!」
『えー』
「文句言わーんと!」
『……はいはい』


こいつの理想の女になるにはまだまだ時間がかかりそうですね。
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