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ぐっすりと眠りについている彼の寝顔はなんとも間抜けだった。口は大きくあいて、よだれも出ていて、時々もぐもぐとさせる。大きいからだも丸まって、小さなかたまりになっている。高い体温に、規則正しい寝息。
彼の背にすり寄れば、ちょうど寝返りをした彼に抱き寄せられる。耳を胸に当てると、ちゃんとどくんどくんと音がして、安心させられた。


彼の生に不安を持つようになったのはいつからだろうか。
長い長い間一緒にいたせいかもしれない。いつ死んでもおかしくない暗い世の中のせいかもしれない。ふらっとどこかに行ってしまうせいかもしれない。
何時間も帰ってこない彼を探しに行けば、海でぼうっとしていたり、古本屋さんで立ち読みをしていたり、木陰で眠っていたり、犬と遊んでいたり。
ばくばくと鳴り響く鼓動が、彼を見つけるとぴたりと静かになるほどに、ほっと息をつく。


部屋の中はただでさえ混沌としているのに、クラッカーの紙片があちこちに散らばって、誰が掃除すると思ってるんだよ状態。さっきまで一緒にいた元比嘉中テニス部の連中も、ひやかしながら帰って行った後だ。
テーブルの上にあった、食べかけのケーキの生クリームを人差し指ですくって、彼の唇の上にのせてみた。唇からよりいっそう赤い舌が覗いて、生クリームをなめとる。
それにすら、彼の生を感じてしまう。
私は、もう一度生クリームをすくいとって、彼の唇の上にのせると、再び現れた真っ赤に熟れた舌に吸いついた。
嗚呼、彼は生きている。

Title by 消えた398 すこし話をしようか
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