▼ ▼ ▼

私の好きな人には好きな人がいました。


クラスメイトの神尾アキラくんに絶賛恋心を抱き中の私ですが、彼の事を調べていくうちに、彼が橘杏ちゃんのことが好きだということがわかりました。


『ねぇ森なんで教えてくんなかったの』
「教えても何も……一目瞭然だろ?なんであれでわかんないんだよ」
『わっかんねーよ!神尾くんしか私の瞳にはうつんねーよ!』


実際、森もなんかぼやけて見えるし。
あんなに鮮明にきらきら輝いて見える神尾くんなのに、すでに好きな人がいるとか。しかも杏ちゃんとかめちゃめちゃいい子じゃないか。明るくって、優しくって、かわいくって、積極的で、女の子の私ですら好きになっちゃうくらい素敵な子に片思いしてるだなんて、そんなのかないっこないじゃないか。


『なんでよりによって杏ちゃんなんだろ』
「知らないよ」
「何々?杏ちゃんの話?」
『わっ!』


森と私の会話の中に入ってきたのは、そう、まさに今噂していた神尾くんだった。森は、肩をすくめた後、そのまま何事も無かったように前を向いた。
ちくしょう……!嬉しいけど嬉しくない!


『いやぁ……、えと、杏ちゃん素敵だよなぁ……って』
「あれ?梓月って杏ちゃんと仲良かったっけ?」
『あー……ちょっとね』


そんなの、神尾くんを見にテニスコートに来ててたまたま声かけられたからなんて言えるわけないじゃないか!あの時初めて喋ったけれど、本当にとてもいい子だった。あーあ、へこむ。


「そうなんだよなぁー……杏ちゃんホント素敵だよなぁ、梓月もそう思うよな」
『神尾くんは』
「え?」
『神尾くんはやっぱり杏ちゃんのことが好きなの?』
「へっ、えっ、あっ、お、おうっ!」
『そっか』
「あ、杏ちゃんには絶対いうなよ!」
『神尾くん』
「ん?」
『頑張ってね、応援してる』
「おう!ありがとな!」


そう言って自分の席に再び戻っていく神尾くんの後姿を見つめる。森が振り返って、私にバーカと呟いた。


森の言うとおり、私は本当に救えないバカでした。
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -