▼ ▼ ▼

ああ、あついあつい。
全身の水分が煮えたぎってしまいそうだ。ぷつりぷつりと額にあらわれる汗を手の甲でぬぐう。


『ねえ、丸井聞いてる?』


聞いてる聞いてる。すいかが何だっけ?あ、アイスだったっけか。とりあえず今は冷たいもの、なんでもいい、とにかく冷たいものを体が欲している。それが甘ければ尚更いい。


『丸井?丸井!?』


あーうるせえなぁ。頭がガンガンする。だんだん意識が遠いところにいきはじめて、俺はここで改めて炎天下の下に投げ出された体を思った。
そうか、俺は倒れたのか。
目の前に広がるのはぼやけた青空で、入道雲がおいしそうに浮かんでいる。
あーソフトクリーム食いてえ。


『丸井』


はっと目覚めた時には、青い空も白い雲もなくて、ただ清潔そうなカーテンや壁が見えるだけだった。少しだけ開いたカーテンの隙間から、誰か覗きこんできたと思えば、それは梓月だった。


『気付いた?』
「俺……」
『ねっちゅうしょうだって』


そう言って梓月はスポーツドリンクを渡してきた。少しぬるくて甘ったるいけど、じんわりと体にしみわたっている気がする。


「……ねっちゅうしょ」


ぼんやりと呟けば、梓月はこくりと頷いた。
じゃあ、いいのか。


『えっ、んっ』


まわりきらない頭の中、梓月の襟を掴んで引き寄せると、そのまま自分の唇に梓月の唇を押し当てた。驚きに満ちた顔が、自分にも伝染してしまいそうになるけれど、まるで味わうように目をつむる。少しずれた唇に歯が当たって、鉄の味が口の中にやんわり広がる。
甘いのかもしれない。でも決して冷たくはなかった。なのに、もっと欲しいと思ってしまった。
ふつりふつり。また全身の水分が沸騰しはじめる。
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -