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『ちねん』
「あい?」
『一緒寝よ』
「ぶっ!?ばっ!?なっ!?何言ってるやさ!?」
『お布団持ってくね』
「ちょ、やめれ、てん!てん!?」


隣に住む一個下の幼馴染のてんはわんの布団をずるずると引っ張って、自分の布団の横にぴったりとくっつけてしまった。わんに向かってにこりと笑むと、満足げに再び自分の布団に横になった。
何故ここにてんがいるのかというと、今日は親二人とも仕事で帰ってこれないからだ。こんなことは日常茶飯事で、てんはしょうがないって少しだけ寂しそうに笑う。ご両親も申し訳なさそうにしているところを見たわんのおかあが、てんの世話を申し出たという話だ。
ふすまで仕切られた隣の小さな部屋が今では、てんの秘密基地としてあてがわれているのだ。


「いきなりどういうことだばぁよ」
『ちねんと一緒に寝たくなったの』
「ぬーでまた」
『……なんとなく』
「……」
『……』
「……」
『……だめ?』
「……今日だけやっし」
『ありがと』


小さな部屋に二つの布団が並ぶと、それだけでいっぱいいっぱいだった。ぼふりと布団に横たわると、簡易的に作られた机の上に、飾られていた写真たてが少しだけ揺れた。


『ね、ちねん』
「ん」
『私ね、ちねんとこうやってお話するの好き』
「ふうん」
『いつもは見上げなきゃいけないちねんの顔が近くにあって、なんだか安心する』


てんは既に眠たげな目をして、うっすらと開く目で笑うものだから少しだけどきりとした。するりと伸びてきた手は少しだけわんの髪の毛を弄んで力が抜けたように滑り落ちる。
寝たのか、そっと息を吐いて、タオルケットをかけなおした。無理をしていつも背伸びをして見つめている世界は、きっと彼女にとってとても疲れるものなのだろう。だから時々、こうやってわかりやすい甘え方をする。
規則正しい寝息に耳を傾けながら、彼女の頭を撫でれば、少しだけくすぐったげに身を捩った。わんと一緒にいて安心できるなら、ずっと彼女のそばで安らぎを与えていよう。
そう言葉には決して出さないながらも。
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