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『今日雨だってさ』
「ふーん」
『そんだけ?』
「いつものことやっし」


そう言って、おもしろくなさげに黒板から顔を背けた平古場は、私の方に消しゴムのカスを飛ばしてきた。けれどもそのカスは私の机に届くこともなく、机と机の間に虚しく落ちる。


『今にも降りそうだけどねぇ』
「いつものこといつものこと」


それしか言えんのかお前は。
飛ばす消しカスもなくなったと思えば、今度は口をとがらせてその上にシャーペンを置く。そわそわそわそわ。暇そうだねぇ。


『今日海見に行けないね』
「あ?」
『約束してたじゃん』
「してねーらん、海なんていつでも見れるばぁ?」
『いや、一緒に行こうって言ったじゃん』
「はー?」


いやいや、はぁ?って言いたいのはこっちですし。約束してきたのはそっちなのに覚えてないとかなんなの。
口の上にあったシャーペンを取り上げて、私は分解し始める。うとましげな目に気付かないふりして、バラバラにしていれば、平古場は私のペンケースからお気に入りのシャーペンを取り出した。


『ねー海ー海ー』
「梓月しにうるさい、授業の邪魔さんけー」
『授業ちゃんと受けてないのは平古場じゃん』
「わんはもう寝る」
『うわ逃げた』


くるりくるりと何回転かしたシャーペンを机の上に放り出して、平古場は突っ伏した。授業も、私のことも放棄した平古場の肩がゆっくり上下する。
え、こいつまじで寝たの?はーあり得ねーらん。と思っていたら、急に起き上がった平古場は、ぐぐいっと私に顔を近づけてきた。


「また明日」
『は!?』
「明日行けばいいさー」
『ふうん』
「アイス、奢りばぁよ」


なんで私が奢らなきゃなんないのさ。と言いたくても、再び放棄した平古場には届かない。しょうがないし奢ってやるか。ため息を吐きながら私は机の下でこっそり財布を確認した。
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