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『ねぇ、金ちゃん』
もし、私が金ちゃんのこと嫌いだったらどうする?
背を向けていた金ちゃんは、ゆっくりとした動作で振り返ると、なんやそれ、と笑って私の頭を撫でた。
「てんがワイのこと嫌いなわけないやろ」
まぁ、それもそうか、と納得して、私は再び枕に頭を沈めた。とっくの昔に声変わりしてしまったにもかかわらず、どこか甘い響きを持っている金ちゃんの声が心地いい。
このまま眠っちゃいそう。疲れてるし。目を閉じれば、その瞼の上に何度も唇を落とされる。
「寝たらあかんー」
『だって眠い』
「せやかてもっとワイてんと喋りたいねん」
『んー』
「てんー」
『寝させてくんないと金ちゃんでも嫌いになる』
「えー嫌いになられたらワイめっちゃ困ってまうー」
『やっぱり嘘、好き』
「そんなん知っとる」
金ちゃんに抱き寄せられて、足を絡めとられると、なんだか罠にかかった気分になる。甘ったるい香水が鼻をくすぐって、私は泣きたくなった。金ちゃんの肩ごしに見える机のカレンダーはいつの間にか4月にめくられていて、目についた数字から目をそらすようにして金ちゃんの胸に顔をうずめる。
「てん好き。愛しとるで」
嗚呼、本当に。
フール
フール
フールエイプリルフールなんてくそくらえ。