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息が出来なくなるキスってあるの。

私は今まで読んでいたマンガを閉じて、精市を見上げた。精市は私の隣に座って、優雅に紅茶を飲んでいる。何ティーだったか忘れたけれど。私はそばに置いてあった市販のチョコをつまんで自分の口に放り投げる。


「さあ、どうだろう」


目を伏せて、紅茶の香りを楽しんでいる精市にとっては、あまり興味のない話題だったらしい。適当にはぐらかされてしまった。
この間、私は初めてキスをした。精市と初めて。
でも、息が出来ないという感覚はまったくない。ただ、自分よりも柔らかいんじゃないか、という唇が私の唇に合わさるだけ。息なんてできる。ふんすふんす。


「何、そんなに鼻息荒くして」
『別に!』


清潔そうな石鹸の香りと、紅茶の甘い甘い香りが私の中に入ってきた。精市の香りだ、なんて思っていると、近くに精市の顔があった。
目がぱちり、と合う。
精市は紅茶の香りを楽しむ時のように目を伏せて、私に口づけた。やっぱり私より柔らかい唇は、私の下唇を噛んで、ゆるりとよりいっそう柔らかいものが口の中に入って、私の舌をからめとっていく。
あれあれ、なんだか、息ができないような。精市ってばもしかして。


「チョコの味がする」
『も、もう!そんなこと言わない!』


おかしそうに笑う精市に、きっと大事にされているんだろうなぁ、って気づいてしまった。
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