佐伯とのシロクマからはじまる旅

「ねぇ、梓月シロクマ食べない?」


ふらり、立ち寄った商店街。
目をきらきらと輝かせて何を言い出すかと思えば。
興奮気味に私の手を引っ張って店の前に来ると、のぼりと店頭にあるサンプルを交互に見ながら、どれがいいかなあと唸っている。
人に尋ねておきながら、佐伯の中では既に食べるのは決まっているみたいだ。
こんな真冬にこんなおっきいかき氷食べたらきっとお腹壊しちゃうよ。
そう言いたげに佐伯のことを見つめてみるが、その視線に気づいた彼が放ったのは、梓月と違う味にして半分こにしよう、なんて言葉だった。


『一つで充分です!』


途端にまるで耳を垂れた犬のように、悲し気に請うその瞳にうっかり負けてしまい、彼に連れられるまま店に入ると、目の前には二つ、大きな器に盛られたシロクマが用意されてしまった。
佐伯は、ミルクと蜜とフルーツがたっぷりのシロクマで、私はイチゴソースとミルクたっぷりのストロベリーシロクマ。
削られた真っ白な氷が照明に照らされていて、そのひとつひとつが綺麗な宝石みたいだ。
そっとすくって、口の中にいれると、シャリシャリした食感が現れてはすぐに消える。
甘い甘いミルクが、フルーツの甘酸っぱさにマッチして、たまらず二口めを口に入れると、きいんと頭に響く。
ああ、でも、やっぱり、


『んー、おいしい!』


そうだろう?
なんて、得意げな顔で、佐伯は私のシロクマをすくう。
さらには大きなイチゴまで勝手に食べたので、負けじと私もさくらんぼに手をのばし、ぱくりと食べる。
お互い恨めし気に見つめあった後、二人して同時に噴出した。


「さぁ、この後はどうしようか」

『さつまあげでも食べに行く?』

「まだ食べるの?梓月は意外と食いしん坊なんだね」

『うるさいなあ、みんなにお土産も買わなきゃでしょ?』

「流石に早くない?」

「楽しくてあっという間だよ、善は急げ」

「……それも、そうだね」


楽しくなりそうな予感しかしない。
佐伯との旅行はまだ始まったばかりだ。



佐伯虎次郎/鹿児島



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