宍戸くんとわんこのお散歩


「あ」

『あ』

公園でばったりと出会ったのは、同級生の宍戸くんだった。

日曜日のお昼。
だいぶ暖かくなってきて、気持ちが浮かれた私は、調子に乗って、我が家の愛犬・モコと共に少し遠出をしていた。
いつも行く公園を飛び越えて、更にもう一つ先の公園へ。
広い広い公園では、遊具で遊ぶ子供達や、ベンチでお昼寝をしているおじさん、ジョギングをする学生、お花見をしているおばさんたち。たくさんの人で賑わっていた。
モコははちきれんばかりにしっぽを振りながら、ぐいぐいとリードをひっぱっていく。
運動不足もたたって、息を荒立てていた、そんな時に偶然鉢合わせしたのが宍戸くんだった。


『いつもここで散歩しているの?』

「いや、時々。部活が休みの時にここに来て、こいつとフリスビーやってる」


そうなんだ。
宍戸くんは手に持ったフリスビーを、右に左にと持ちかえる。彼の傍でしっぽを思いっきり振って、大きなくりくりっとした目で、フリスビーは今か今かと待ち受けているのを見るとなんとも微笑ましい。


「梓月はよく来るのか?」

『ううん、初めて来た』

「そっか」

『でもこことても気持ちがいいね』

「だろ?」


なんで宍戸くんが自慢げに言うんだろう。面白くなって笑っていると、何笑ってるんだよって怒られた。
宍戸くんは慣れた手つきでフリスビーを投げる。
勢いよく飛び出して、それはそれは華麗に飛び上がり、キャッチをする。その一連の流れがあまりにもスムーズで、感動していると、フリスビーをくわえたままこちらに駆け寄ってくる。その姿も愛らしくて、口元がにやけてくる。


「犬好きなんだな」

『うん大好き。かわいくてしょうがない』


傍に来てくれた彼の愛犬をおもいっきり撫でてあげると、今度は私に投げろ、と言わんばかりに、フリスビーを差し出した。
わ、嬉しい。
でもフリスビーなんて投げたことない。
やってみろよ。
宍戸くんはそう言って背中を押す。
私が構えると、モコも一緒になって、フリスビーをじっと見つめた。
私の手から離れたフリスビーは、風をきって進んでいく。
ドキドキしながらその様子を見つめていると、二匹は一緒に駈け出して、フリスビーをめがけて一目散に走っていく。下降を始めたフリスビーに二匹は飛びつくと、先に彼の愛犬がキャッチして戻ってくる。
モコは負けちゃったけど、なんだか感動しちゃって、宍戸くんを振り返ると、やったな、と言ってにっと笑った。
その後、戻ってきたモコはすぐに疲れちゃって、その場に伏せてしまった。
私もモコも運動不足みたいだ。


「だったら、また来いよ」


宍戸くんはまたフリスビーを投げる。二人はまだまだ元気いっぱいみたいだ。


「また一緒にフリスビーやろうぜ」


そう言って笑う宍戸くんに、私は思いっきり頷いた。



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -