赤也と初詣
今年の紅白は紅組の勝ちだった。
故に私は負けてしまったのだ。
「やっりぃ!やっぱ赤は強いっすね!」
さっきまでうつらうつらとしていたくせに。
うらめしげに見つめれば、赤也は何故だか目をそらして、私の背後へと回った。
『ちょっと』
「少しだけ」
背後から伸びてきた手は、私のお腹へと。背中に感じるぬくもりは、こたつの何倍もあたたかく感じた。
『赤也』
「ん」
『初詣いこ』
「えー?」
『えーじゃない。約束、してたでしょ』
長いため息をついた赤也は、私から離れていく。ぬくもりが無くなった背中に少し寂しさを感じながら、それでもほっとしていた。
年上なのにドキドキして、余裕がなくなるとか、あまりにも恥ずかしすぎる。
心臓の音、ばれちゃいないだろうか。
私は、ほてった頬を隠すように、マフラーを念入りに巻いた。
除夜の鐘が鳴り響く中、暗い夜道を二人並んで歩く。
赤也はまっすぐ前を向いたまま私に手を差し出した。
寒いでしょ。
そう呟いた声は、寒さのせいなのか、少し震えていて、私はそっとその手を握った。冷たい指が、私の指にからんでいけば、なんだか急に手だけ熱を持ったように熱くなった。
神社につくと、もうすでに初詣の人たちでいっぱいで、階段の上からあたたかい光が漏れている。
ぜんざいや甘酒のふるまいが、今年もあるのだろう。赤也はどっちが好きなのかな?
いよいよっすね。
人混みにのまれないように、先ほどより強く握られた手がすごく愛おしい。
『何お願いするの?』
「……へ!?」
『赤也?』
「あ、いや……ナイショ」
『そっか』
「てんさんは?」
『私もナイショ』
赤也とずっと一緒にいることができますように、なんてお願い、本人の前で口に出せるはずがない。そんなのあまりにも恥ずかしすぎる。
そっか。ナイショなの俺と一緒っすね。
にっと笑った顔がとてもまぶしい。
「てんさんといつまでも一緒がいいなぁ……」
今まで一度も聞いたことのない、優しい声音が、白い息と共に上へ上へとのぼっていく。
そのまま神様に届けばいいのになぁ。