木手くんとすべれるアイススケート

今日は木手くんのお誘いを受けて、スケートリンクへとやってきた。
私はもちろん初めてで、沖縄出身の木手くんも初めてらしい。
スケート靴を履くのに手間取っていると、既に履き終えた木手くんが、私を覗き込む。


「うまく履けないんですか?」

『ご、ごめんね!どんくさいよね!』


木手くんは何も答えず、しゃがみこんで、そっと私の足を取った。びっくりして何も言えずにいると、木手くんは器用に私の足に靴を履かせていく。
おとぎ話じゃないんだから。
そんなツッコミすら言えないほど、その所作の一つ一つがかっこよすぎて心臓に悪い。
私の両手を握って、立たせてくれた木手くんは、そのまま私をリンクへと導く。
とことことまるでペンギンのように不器用に歩きながら、こけそうになりつつも、支えてくれた木手くんのおかげで、私はなんとかリンクへの入り口へとたどりついた。
ふう。
もうこれだけで精いっぱいなんだけど。
氷を前にすると、ころんでしまいそうで一歩が踏み出せない。
傍に立って私の様子をじっと見ていた木手くんは、何を思ったのか、私の手を握り、思いっきり滑り始めた。
なにしてんの!なにしてんの!
悲鳴すら出ない。
へっぴり腰になっている私の腰に手をまわして、まるでフロアでダンスでも踊っているかのように、木手くんは私をリードする。
滑る度に削られる氷が、きらきらとまぶしい。なんなの?木手くんなんなの?王子さまなの?ていうかなんで沖縄出身で初めてなのに木手くん滑れてるの!?
混乱のまま、木手くんを見上げると、ふいに目が合い、すっと目が細められた。


「初めて、というのは嘘ですよ」


あなたにかっこいいところをお見せしたくて練習しました。
そう、はにかんだ笑顔に、私は思わず気を失いかけました。



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