ペテン師たちとメロンパン
メロンパンって焼くとおいしいよ。
って、誰かが言っていた。
ストーブの上でじりじりと焼けるメロンパンを見ていたら、同居人の柳生が息を吐いた。
「また焼いてるんですか」
『メロンパンは焼くものだからね』
「分かりません」
柳生は興味も無さそうにコーヒーを飲んでいる。
よくコーヒーなんか飲めるよね。あんな苦いやつ。
メロンパンには牛乳がとても合う。そうだ、ホットミルクでも作ろう。
冷蔵庫の中に入っている牛乳を手鍋に移して、ストーブの上に置く。
「ていうか邪魔なんじゃけど」
もう一人の同居人が、うっとうしげにつぶやく。
ストーブの前は、もはや私の陣地である。仁王が邪魔に思おうがどうでもいいことだ。
それよりもうそろそろころあいだろうか。メロンパンが焼ける。
ああ、いいにおい。
牛乳もまくが出来始めている。
ああ、もうすぐ至福の朝ごはん。
「梓月ありがとさん」
『あ』
仁王が自分のカップに先ほどできたばっかりのホットミルクをそそぎこむ。
真っ白なミルクが、みるみるココア色に染まる。
嘘だ。この人。
「いただきます」
『ふざけんな』
「仁王くん、それはあまりにもひどい」
「なんとでも言いんしゃい」
『最悪』
メロンパンは焦げてしまった。