恋の味

するりとリボンをほどく、彼女の指を見ていた。ほんのりピンク色に染まった指先は柔らかそうで、ついつい触りたくなる。耳をそばだてると彼女の鼓動が聞こえてきそうだった。


『これ、私に?』
「……ああ」


ぱあっと彼女の頬に赤みがさした。
窓から入ってくるあたたかい風が、自分の背中を押してくれているような気がして、ひと月前、いや、それよりもずっと前から両手に抱えてきた納まりきらない想いを声を大にして言いたくなった。
そんなことをできるわけないが。


『私のためにわざわざ?』
「さ、さっきからそう言ってるだろ」
『そっか』
「なんだよ」
『嬉しい』


袋の中から取り出した小さなキャンディを一つつまんでくわえた彼女はにっこりと微笑む。きらきらでまぶしくてかわいらしい店に立ち寄って、女子の中に混ざりながら悩んで選んでよかった。こんなにきれいな彼女を見ることができたのだから。


『まさか日吉くんからお返しもらえると思ってなかった』
「なんでだよ」
『忘れてたと思ってたし』


忘れるわけがない。
いつだって、彼女からもらったもの、もらった言葉を忘れることなんてできない。その一つ一つは自分を励ましてくれていたものだから。だから今日、彼女にお返しを送らなければならなかった。


「……ずっと言ってなかったからな」
『何を』
「お前にはいつも感謝してる」
『急にそんなあらたまっちゃって』


日吉くんらしくないなぁ。そんなことを言いながら彼女は嬉しそうに頬を緩ませた。自分だってらしくないって思っている。でも今までの自分じゃ伝えきれないから。
彼女の頬を両手で挟んで薄く開いた唇にキスを落とした。驚いた顔をした彼女の両手を握って、彼女の目を見つめる。


「スキだ」
『え』
「梓月のことがスキだ」


この握った手から、伝わればいい。風に乗って彼女に届けばいい。不器用だけど不器用なりに心を込めたから。
彼女の唇から出た答えは、恋の味がした。


by 「for you」



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -