鳴ってはやみ鳴ってはやむ携帯のアラーム音をどこか遠くで聞きながら、夢の世界から追放されて、私はうっすらと目を開けた。
うるさいなぁ。
自分で設定したくせに、そんなことも棚に上げて、私は電源を切ろうとしたけれど、ぼやけた視界に写ったのは時間ではなくて、あいつの名前だった。


「おい梓月、お前、今何時やと思っとるん!?」
『は?午前12時だけど』
「何当たり前やんみたいな感じで言っとんねん」
『別にいいじゃん。私の勝手でしょ』
「ま、まぁそうやけどなぁ!」
『春休みだもん』
「そんなんわかっとるっちゅー話や!」


だいたいなぁ、春休みやからってだらだらしてどうすんねん。有意義に過ごしたいっちゅー気持ちはないんか。そないにのんびりのんびりしよったらなぁ、あっちゅう間にばばあになってまうで。お前の青春時代真っ暗闇で終わるで。ええんかそんなんで。お前の青春そんなんでええんか。
とかなんたらかんたら、なんで私は心地よい眠りを阻止されて、こんなお小言を早口で聞かされなきゃならないんだろう。もう意味わかんないや。眠いし。適当に返事しつつまた寝ちゃおう。携帯を耳に当てたまま枕につっぷす。ほら、どっかのなんとかが春眠なんたらって言うように、春は眠りの季節なのよ。


「せやからなぁ、今日俺の誕生日やねんからちっとは女らしいとこ見せろや!」


そうそう、誕生日ね、誕生日。誕生日なんだからゆっくり夢の中に……って、は?誰の誕生日だって?


「俺の言うたやろ!」


謙也の?誕生日?今日?は?


『はぁああ?あんた今日誕生日なの!?』
「いや、しっとるやろ!何年の付き合いやとおもっとるんや!」
『や、だって今日16日じゃ……』
「あほか!もう17日っちゅー話や!」
『うっそ!寝過ぎた!』
「どんだけ寝とるんやお前は!」
『だって眠いし!』
「ええ加減にせえよ!」


こっちは日付変わってずっと携帯とにらめっこして、結局寝れんくて寝不足なんやぞ。梓月お前のせいや。お前が俺を祝わんからこないなことになんねん。ふざけんなよ。
再びお小言が始まる。
はいはい、ごめんなさい。それはそれはわたくしめが大変悪うございました。眠かったんだもん。しょうがないじゃん。生理現象にあらがえるわけないじゃん。もうなんか腹立ってきたから不貞寝してやろうか。謙也の誕生日なんか知らん。もう知らん。


「ちゅーわけでやな、今お前ん家の前におるから鍵開けろや」
『はっ!?な、今なんて?』
「だから、お前ん家に来とるっちゅー話や!」
『うぇえええなんでえええ』
「せやから、梓月が俺をちゃんと祝わんかった罰や」
『いやいやいやいや』
「モノくれなんてもう言わんから、残りの梓月の時間貰ったるわ」


まぁまぁ、あの謙也クンが恥ずかしげもなくそんなこと言えるとは思ってなかったわ。そのせいでなんかちょっと眠気もさめてきてしまった。
あ、でも、私今パジャマだわ。化粧ももちろんしてないわ。それでもいいの?なんて言ったら、鼻っから期待してないんだってさ。
まぁいいか。
寝誕生日っていうのもなかなかにいいんじゃない?
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