『あああもうやだあああ!』
「電話してきていきなり嫌だとはいったいどういうことなんだ」
『あ?手塚?ありゃ、間違って手塚にかけっちゃったのか!英二にかけたつもりだったごめんごめん』
「……そうか」
『まぁでもいいや手塚で』
「その妥協感は人を傷つけるぞ」
『あのさぁ、もうさぁ、煮詰まっちゃって』
「何を作っているんだ?」
『作る?何も作ってないよ?』
「?」
『あ、ああ、その煮詰まるじゃなくって。勉強に煮詰まってるの』
「それならそうと早く言え」
『ごめん』
「で?何が分からないんだ」
『分からないものが分からない』
「……お前明後日受験じゃないのか」
『だぁかぁらぁ!煮詰まっちゃったって!言ったじゃない!もう無理だよ……手塚ァ……手塚ァアアア!』
「耳元で叫ぶのはやめてもらおうか」
『ごめん』
「梓月は明日暇か」
『暇じゃない。図書館で詰め込む』
「そうか、だったら俺が教えてやる。明日9時俺の家に来い」
『えっなにそれお家デート?』
「聞こえなかったのか?明日9時に俺の家に来て勉強だ。俺が分からないところを教えてやる」
『ちぇー!初めてのお家デートだと思ったのに!』
「ちゃかすんじゃない!」
『ごめん』
「油断は禁物だ、最後まで粘って行くぞ」
『うん、ありがとう手塚』
「構わない」
『明日も明後日も頑張る』
「その意気込みが大事だ」
『うん』
「……ところで、こんな時間に俺以外の男に電話とはどういうことか説明してもらおうか」