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ついてない。
たいくつな授業が終わり、さっさと家に帰ろうと、校舎から出て西の空を見れば真っ黒な黒い雲がだんだんこちら側に近づいているところだった。うそでしょ最悪。お天気お姉さんが今日は晴れるっていってたから傘なんて持ってきてないし。ホント困るよなぁ、自分の仕事をきっちり全うしてよ、なんて悪態づこうとしたけど、信じた私も悪かったのだ。しょうがない走って帰ろう。そうおもって走って帰っていたのだけれど、途中からぽつり、ぽつりと空から大きな粒が落ちてきた。こりゃしばらくしたらはげしいのがくるな。私は近くにあったコンビニに飛び込んだ。


「あ」
『あ』


あーあ、ほらやっぱりついてない。
常日頃から会いたくないと思ってた人物にあっちゃった。今日はなんて厄日なんだ。


「なにしてんの」


たいして興味無さげにやつが聞いてきた。眠たいのか目をこすっている。ていうかねむたそうのはいつものことか。


『別に』
「あっそ」
『雨宿り』
「ふーん、どうでもいいけど」
『聞いてきたのそっちじゃん』
「そうだっけ」
『そういう芥川はなにしてんの』
「別に」
『あっそ』
「新作ポッキー見てたの、金かして」
『いやだし』


なんで芥川にお金かさなきゃいけないんだ。ああもうホントめんどくさいし苦手。このやる気のなさに興味なさげな態度、それにあの冷たい目。人をなんとも思っていないような。あの目で見られると胸がしめつけられていたくていたくてしょうがない。なにもかもみすかされているようで、芥川といると落ち着かない。

「っていうか雨ふってんの?」
『じゃなきゃまっすぐ帰ってるし』
「ふーん...あー傘忘れたC」
『買えば?』
「買って」
『は?いやだし』

じゃあいいや、なんていって芥川はジャンプを読み始めた。ふうん、芥川でもジャンプ読むんだ、どうでもいいけど。私は飲み物コーナーに行って、新作チェックすることにした。


「コーラ」
『買わないし』
「えー」
『てかさっきまでジャンプ読んでなかった?』
「…だC」
『はい?』
「お前が俺から離れるからだC」


ごめん、なんだこれ意味わかんない。ぽかんとして芥川を見ていれば、耳まで真っ赤にした芥川は私をにらみつけてきた。何この態度いつもとなんか様子違うし。雨のせい?この大雨のせいでおかしくなっちゃった?


「なんでいつも避けんの」
『あんたがいろいろちょっかいかけてくるからじゃん』
「あーっもう!なんで気づかないC!!」
『はい?』


何に気付けっていうわけ?私が気にくわないだけじゃないの?だから私も芥川のことを避けようとしていたし。わざわざ楽しくもない不愉快な相手がそばにいる必要性もないだろうし。私なんかが、私なんかが芥川の隣にいる必要だってない。唇を噛むと、芥川は一瞬苦しそうに笑って、だるそうに項垂れて、私の肩に額を乗せてきた。きゅっと私の袖をつかんできた芥川の手は布ごしに伝わるほど熱くて。その熱さは私の胸にまで届いて鼓動をはやくさせた。


「梓月のこと好きって早く気付けC」
『わかりにくいわバカ』


雨はまだ降り続いていて、その二つの小さな呟きは雨音に吸い込まれていった。初めてうけた告白がこんな大雨で、それで傘忘れてて、さびれたコンビニでなんて。ついてない。だけど、それもまた私たちにぴったりなのかなって。
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