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「なんで泣いとるん?」
『な、んでもっないしっ』


テニス部の練習から抜け出して、変装道具を教室に取りに来たら何故か隣の席の梓月が泣いていた。いったい何があったのか。こいつは普段泣くようなやつじゃない。寧ろ男気満載で、泣かせるのが仕事みたいなやつだ。


『でてけ』


片手で両目を抑えて、しっしと手をふる。残念ながら俺はこんな状況のまま出ていけるような空気の読める男じゃない。じっと見ていれば、うざいと言われた。


「なにかあったんか」
『仁王には関係ない』
「じゃあ聞いてもいいじゃろう」
『ほっといてよ』
「いーや」
『ふざけんな』


あ、涙のあと残ってる。顔をあげた梓月の鼻をつまめば頭をはたかれた。


「何があったんぜよ」
『……ちょっとしたいざこざ』
「ふうん」
『何』
「いやぁ?理由はなんにせよ、お前さんのそんな顔見れたのは役得ぜよ」
『……趣味悪い』


お前さんだけなんじゃがのう、なんてため息と一緒にこぼれた本音はきっと聞こえてない。まぁ、でも、もうしばらくはこんな位置にとどまっておくのも案外楽しいかもしれない。
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