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俺の隣の席の子は本当にかわいい。授業中ぐっすり寝てたり、ぼーっとしてたり、時々窓の外を眺めてたり。彼女の横顔はとってもきれいで、上でくくられた髪の毛は長くてさらさらだ。ああ、かわいいなぁ。


「ねぇ梓月さん」
『ん?』


頬杖をついてた梓月さんは首だけをこちらに向けた。さらりと背中に流れる髪の毛から、なんとなく甘い香りが鼻をかすめた気がして、くらりとした。


「今日、暑いね」


そうだね、なんて言って梓月さんは笑った。梓月さんは、こんなくだらないあいさつ程度のものでも話に付き合ってくれるいい人。ちょっとつまらないと思っていたこの授業も、梓月さんのおかげで楽しめそうだ。


「数学の予習やってきた?」
『あ、忘れてた』


こういうちょっと抜けてるところもかわいいなぁなんて思っていると、梓月さんは小さくため息をはく。


「見せようか?」
『ううん、ちゃんと自分でやるよ』


ほらこういうところも。
梓月さんは驚くほどにまじめだ。俺のまわりには、課題見せてなんて言ってすり寄ってくる人が多かったのに、梓月さんだけは違った。何でも自分の力でやろうとする頑張り屋さん。そして、それ故に時々押しつぶされそうになっているのを俺は知っている。だから思わず手を伸ばしちゃうんだけど、梓月さんは決して手を取ることなんてしない。それは俺にとってちょっとさみしいことだけど、それが彼女なのだからしょうがない。


「ねぇ梓月さん」
『ん?』
「明日も晴れるかな」
『……晴れるといいね』
「うん」


俺はまた黒板に向き直り、梓月さんはまた窓の外に目を戻した。最早先生の口から出てくるものはなにかの呪文にしか聞こえない。そういえばつい最近気づいたんだけど。俺って、もしかしたら梓月さんのこと好きかもしれない。
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