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『あっつ!』
「どないしたん」
家に帰って一息つこうと思ってお湯をわかしたのはいいけれど、あまりにも熱すぎて舌を火傷した。
こういうのって地味に痛いんだよね。ずーっとひりひりするし。なんていえば、呆れ顔で一氏に、どんくさいやっちゃな、なんて言われたから、うるさいな、と返せば本気でどつかれた。そんなんだから小春ちゃんにふられるんだよ、小春ちゃんに。そして小春ちゃんとのデートがなくなったからといって我が家に転がり込むのやめろ。私は彼氏でもなんでもないやつにつきあってやるほど暇じゃないっての。
「ん」
『何?』
「いや、舌出せや」
『なんで』
「診てやるいうとんねん!さっさと出さんかいボケ!」
『えー……』
「もじもじすんなきしょい!」
『うるさいなー……じゃあ、はい』
なんかきれられたし。でもこれ以上イライラさせるのもなんなので、言われた通りに舌を出せば、一氏は少し驚いた。いや、お前が出せ言ったんやないか。そのまま右目下を引っ張ってあっかんべーでもしやろうかと思ったけど、思った以上に近くに一氏が来たのでやめた。っていうか、ホント近い。顎を持ち上げられればもっと近くなった。うわあ。相変わらず整ったお顔ですこと。
「お、おお……白なっとるな」
『まひひぇ?』
「……」
急に黙ったから、どうした?って言おうと舌戻そうとしたら、ただでさえ近い顔がさらに近づいて、思いっきり舌を噛まれた。
『っ!なんで噛んだ!痛いし!』
「な、なんでもないわ!」
『って、んっ』
なんでもないわとか言いつつ、舌つっこんでくるんだから、こいつはホントに私のこと嫌いなのか好きなのかまったくわからないっちゅー話です。