▼ ▼ ▼

「てん!今日飯食ってかね?」


突然教室に現れて、私の目の前に立った丸井くんはそう言ってにかっと笑った。
これはいろいろたくらんでるな、っていうかきっとまたジャッカルくんにおごらせるつもりだ。
まったくいつもいつもおごらせて、丸井くんは悪いと思わないのかな?


『よしきた行こう』
「お前、考えてることと言ってること一致してねえ」
『だって、今日はいちだんとお腹すいてるんだもの』
「じゃあ、ラーメン食べに行こうぜ?」
「勝手に話を進めるな!」


いきおいよくあいたドアにはジャッカルくんが、肩で息をしながら立っていた。
こめかみに青筋が浮いててめちゃくちゃ怖い。
スキンヘッドによって、より怖さが増している。


「んだよーたまにはいいだろぃ?」
「たまにはじゃねえだろ!いつもおごってんだろ!いい加減にしろよ!」
『ご、ごめんね、ジャッカルくん、私自分の分はちゃんと出すから!』
「ん?あ、いや、梓月はいいんだ、おごるよ」
「てんずりー!」
「ずるくないだろ!」


丸井くんはあきらめたのか、自分でだせばいいんだろぃ、とすねてしまった。
きっと、これにジャッカルくんは弱いんだななんて思っていると、再び教室のドアが開いた。


「なんじゃ、そろいもそろって」
『あ、仁王!』
「仁王じゃねぇか、どうした?」


ドアを開いた仁王はにやにやとしながら、私たちのところまでくると、プピーナと言った。
よくわからない。


「ジャッカルがおごってくれると聞いてのぅ」
「どこ情報だよ!?」
「ちなみに柳生も来るぞ」
「ええっ!あいつ委員会じゃ!?」
「早めに終わらせてくるらしい」
「あれ?みんなそんなところでどうしたんだい?」
「勉強せんでそんなところでたむろっとるなんて、たるんどるぞお前達!」


急に聞こえた声にドアの方向を見ると、にっこりと綺麗な笑みを浮かべた魔王さまといかつい顔をした皇帝がいた。


「誰が魔王なんだい、梓月」


否、幸村と真田がいた。
なんだか男子テニス部3年が集まりだしたよ。
これはもう


「波乱の予感がする、とお前は言う」
『わわっ!柳くん!いつの間に!?』
「いや、今さっき来たところだ」


そう言って、柳くんは微笑んだ。
これはきっと結構前からいて、データをとっていたに違いない。
メモ帳と筆を柳くんは隠しきれていない。
本当にみんな集まってきてしまった。


「なんだか結局こうやって集まって、やっぱり俺達はかわらないね」


幸村は、少しさみしそうに言って、笑った。
私たち3年生は部活も引退して、受験勉強真っ最中だ。
付属中だから、そのまま上に上がれるとはいえ、推薦試験などがあって大変なのだ。
それに、彼らはテニスに人一倍思いをかけていたから、引退っていうのはやっぱりいちだんとさみしいものがあるんだろう。
常に一緒にいたわけじゃない私にでもわかるくらいに。


『ね、みんなで一緒にラーメン食べに行こう?』
「……そうだね」
「もちろんジャッカルのおごりで、だろぃ?」
「ふざけんな!」


しんみりなんて彼らには似合わない。
こうやって騒いで笑っている方が彼ららしい。


「じゃあ、梓月のおごりということで、行こうじゃないか!」
『どうしてそうなった!』


まぁ、でもたまにはおごってあげるのもいいのかもしれない。
私はそう思って、財布の中を確認して固まった。
みんなから同情の目で見られたのはいい思い出になるだろう。
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -