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いつもの帰り道。
お腹すいたなーなんて呟けば、どっか寄ってかんね、なんて言われてそんな誘惑に勝てるはずもなかった。近場のコンビニに立ち寄る。私は季節はずれな肉まん、千歳はちょっと大きなシュークリームを買った。歩きながら食べるのは特段うまい、なんて千歳とはしゃぎながら帰っていれば、私の肉まんはすぐになくなった。


『あーあもう肉まんなくなっちゃった』
「えっ!?はやっ!いくらなんでもはやすぎったいね!」
『いや、千歳が遅すぎるんだよ』
「シュークリームのクリームが落ちそうやけんね……慎重ったい」
『ふうん……おいしい?』
「うまか」


そう言った千歳は本当に幸せそうに笑った。眩しいやつめ。
それにしてもなんだか物足りない。授業で、ない脳みそフル活用したせいかな。あーあお腹すいたお腹すいた。


「なんね」
『いやぁ?』
「だからなんね!……これ食いたいとね ?」


思わず考えていたことが体に出てしまっていたらしい、シュークリームを頬張る千歳の顔をじっと見ていたら、もう一度、食べたいと?と言われた。素直に頷けば、千歳はにやりと笑った。


「条件があるばい」
『条件?』
「てんが俺にちゅーしてくれたら、これやるばい」
『じゃあいいや遠慮しとく』
「なんでね!」
『いやいやいやいや付き合ってもないのにキスとかおかしいでしょ』
「……どうしてもダメやと?」


眉を下げて聞いてくる千歳はもはや犬だ。かわいいな。だがしかしそんなかわいさに負ける私ではない。そんな、キスとか……いやいやいやいやふざけてる。不純異性交遊なんぞ、けしからん。


「しょうがなかね……これは俺が全部食べるばい」


ああ、シュークリームが消えていく。私はお腹すいたよ。やはりその考えは私の体にも出ているらしく、またじっと千歳を見てしまった。目が合う。


「……いいこと思いついたばい」


えっ?と思った瞬間には私の舌に、甘いクリームの味と柔らかいけどざらざらとしたモノがふれた。え、何これ、何なのこれ。びっくりして千歳を見上げれば、満足げに笑っている。いや、意味がわからない。


『なに、これ……』
「てんはシュークリームが食べたい、俺はてんとちゅーしたい。その結果がこれったい」
『えっえ、意味わかんな、っていうか、私たち何してっ』
「ん?ちゅ」
『うわあああみなまで言うなあああ!』
「あははてん顔真っ赤ばい!」
『笑いごとじゃないってば!』


千歳なんて知らない、なんて言って早足で歩けば、それが千歳にとっては普通の歩幅で、今まで合わせてくれていたことがわかって、でもそれがなんだか悔しい。悔しいから、さし延ばされた手を思いっきりひっぱって、その唇にキスしてやった。




Kiss me , kiss you!




(なーてん、もう一回!)
(誰がするか!)
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