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『20日か』
「ん?なんか言ったかてん」
『いや何も』


さぁさぁ、今日は何の日?そう丸井ブン太の誕生日です。さて、この幼馴染である私がブン太の誕生日を忘れたことがあると思います?そうですよね!そんなことぐらい!今まで忘れてました!とか冗談言ってる場合じゃない。本気でやばい。このまま忘れたなんてブン太に言ったら絶対末代まで呪われる。私ら全員お菓子の家に道連れだ……あ、でもお菓子の家いいな。


「なぁてん」
『何』
「今日さ、」
『あ、そうだ!私日直だったわ!』
「え、おい!」
『じゃね、ブン太!』


ブン太が何かを言う前にさっさと教室に向かう。救いなのかなんなのか、今年は私とブン太のクラスは別れてしまっている。さらに言うと今日は調理実習もある。調理実習は確か豚肉の生姜焼きだった気がするけど無視してケーキでも作ろう。そしたらほら、忘れてたなんてこときっとブン太にはわかりっこないはず。ラッキー!とどこかの幸福男さんみたいなことを呟いて、それまで絶対にブン太に会わないことを誓った。のだが、どうだろうこの状況。おわかりいただけるだろうか。目の前にはあの赤い前髪がちらついていて、背後には学校の冷たい壁があって、私の顔の横にはほどよく筋肉のついた腕がある。


『あの……ブン太……これは』
「これ、壁ドンって言うらしいぜ?」
『へえ、そうなの……って、いやいやそうじゃなくてさ』


どいて?と言えば逃げんの?みたいな目でにらまれた。うわぁ怖い。所謂イケメンににらまれるとか心臓に悪い。罪悪感に見舞われるだろ。


「お前さ、まさか俺の誕生日忘れてたとかないよな?」
『ははっ!まっさかー!』
「超棒読みなんだけど」
『すいませんっした』


頭をかかえたブン太は私の目の前で思いっきりため息を吐いた。あ、グリーンアップルの匂いする。


「俺が毎年どんだけお前からのプレゼントを楽しみにしてるか」
『へ?』
「分かってねぇみたいだな」


ぐいっと近づけられた顔は驚くほど真剣で、思わずどきっとした。いつの間にこんな顔できるようになったんだか。やっぱり小さいころのブン太とは全然違う。身長だけでなく、体つきも大人っぽくなった。顔は相変わらずかわいい顔してるけど。ったく、歳はとりたくないもんだ。ちっちゃいころはなんとも思わない行動でもちょっと大人になっただけでこんなにもドキドキしなきゃいけないなんてさ。


「俺に何か言うことは?」
『お誕生日おめでとう』
「それと?」
『こ、今年も大好きです』
「当然だろぃ?」


(も、もうさ、これ辞めない?)(いやだ)(即答!?)
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