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『って、なんで白石がここにおるの』
「なんでって、てんを待ってたんやないか!」
『だからと言って人のベッドで、しかもパンイチで寝転んでるやつがあるか』
「なんや……てんは全裸のほうがよかったん?せやったら今からでも」
『ならんでいいわ!』


えーとかいいつつ口を尖らせた白石は、私のさげすむ視線に負けたのかしぶしぶベッドから下りると、手持無沙汰気に左手の包帯をいじった。さて、それはそうと、なんでこいつはここにいる。家には家族もいるし、窓も閉めきっているし、さらに言えばここは2階で窓から侵入は難しい。白石が私の部屋に入りこむ余地はなかったはずだ。


『……どこから入ってきたの』
「玄関」
『不法侵入か』
「いいや、ちゃんとてんのおふくろさんにはご挨拶したで」
『え』
「彼氏として、ゆくゆくは結婚を前提として、お付き合いさせてもろてますーってちゃんと挨拶しとったから安心しいや!」
『おい』
「なんや不満でもあるん?それやったらお孫さんの顔ももうすぐ見られますよーって」
『おい黙れエクスタ野郎滅ぼすぞ』
「ったくてんったら照れ屋さんやなぁ!」


白石はこつんと人差し指で小突いてきた。超うぜえ。全力で嫌な顔をしたにも関わらず、そんな顔もかわいいで、なんて言ってきやがった。もうちょっと怖い。とりあえず服を着ろと言って、きれいに畳まれて床に置いてあった制服を投げつけてやれば、それを見事顔面に……ではなくちょっとかっこつけて受け取って、意外にも素直に服を着てくれた。


『で?』
「で?」
『なんでいるの?』
「なんでって……てんの顔が見たくなったからやで?」


あかん?と笑顔で小首を傾げた白石は、かっこよすぎてやっぱり悔しい。だから私は、白石のまねをして、あかんと言えば、ちょっとさみしそうに笑った。何その顔。そんな顔も、いわゆるイケメンな白石にされてしまったら、逆に私が悪いことをしている気持ちになってしまうではないか。


『普通に待ってればいいのに』
「てんへの愛を前にして平凡になることができんかっただけの話や」


ふっと笑った白石に、胸がぎゅっとしめつけられた。ああ、もう本当に甘い。私はどうしても白石に甘くなってしまうみたいだ。だから、ドアを開けた瞬間に喉の奥底に飲み込んだ言葉を、もう一度紡ごうと決めた。


『誕生日おめでとう、白石』



そして



『愛してる』



12.04.14 白石はっぴーばーすでー!
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