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ふうんそうなんだ、やっぱり誰でもよかったんじゃない。
目の前の光景に、私は思わずため息をはいた。まぁ、予想はしていたけど、やっぱり自惚れてただけだったのかもしれない。跡部景吾は今日はやけに機嫌よく、いつもはあまり見せない笑顔でめすにゃんこちゃんたちの相手をしている。


「ん?てんじゃねぇか」
『……』
「なんだよ、黙り込んで」
『別に』


ふいっと顔をそむけて、そのまま跡部の横を通りすぎる。私には関係ない、もうこんなやつと会話することなんてない。


「んだよ、つれねーじゃねぇの」
『っ』
「俺とお前の仲じゃねぇか」
『……そういうところが』
「ん?」
『そういうところが嫌いだっつってんの!』


引かれた腕をはらって私は駆け出した。
後ろでめすにゃんこちゃんどもが、ありえなーいとかなんとか騒いでいたけど知ったこっちゃない。もういい加減にしてほしい。こっちの気も知らないで、なんだっていうの。どこからあの余裕は出てくるの、私なんて全然余裕なんてない。いつだって不安で不安でしょうがないっていうのに。ああ、もう、こんなぐちゃぐちゃな感情誰にも見せたくない。


「おい」


無我夢中でひたすら走った先には何故か、あの跡部がいて、先ほどの機嫌のよさはどこへやら、睨み付けられた視線に私は動けなくなってしまった。
呆然と立ち尽くす私に近づいて、何をされるかと思って目をつぶったら、予想もしていなかったあたたかさで。私はいつの間にか、跡部に抱きしめられていた。
どうした?そう耳元で優しく問われた私は、もう、涙が止まらなくなった。
嫉妬?そうです嫉妬ですもの。他の女の子になんか笑顔を見せないでほしいし、話とかもしないでほしい。でもそんな束縛きっと跡部は嫌がるに違いない、だから言えなかった。


「嫌いなんて言葉撤回しろ」


そういった跡部はなんだか苦しそうで、申し訳なさと同時に嬉しさがふつふつとわきあがるのを無視しきれない私はもう歪んでいるんだと思う。

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