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ああ、私死んじゃうのかな、と思った。
目の前に広がる光景はあまりにも非現実すぎて、何がなんだかわからなくなる。ぼっと熱を持った顔にひんやりとした指がそっと触れる。ああ死んだ、今私死んだね。
「俺、梓月のことが好きなんだ」
熱っぽく潤んだ瞳に見つめられ、赤く熟れた唇が動けば、またもや非現実な言葉が告げられる。きっと私は死んで、神様に会ってるんだ。いや、正しくは神の子?
「梓月は俺のこと、嫌い?」
伏せられた瞳に思わず、ああ残念なんて思ってしまうくらいにあなたのことを愛してます。そう言ってしまえば楽になるかもしれないのに、私の口からこぼれるのは言葉としてカタチを持たないものばかり。もどかしさで体の中をなにかがむずむずとはいあがる。
「ねぇ、梓月?」
答えてよ、と縋るような瞳に再び捕らえられれば、同時に私の鼓動もより激しく波打たれる。好きです、大好きです、いいえ寧ろ愛しています。そんな言葉もかすんでしまうほどにあなたが欲しい。言葉にならないならもう言葉にならないままでいい、そう思って唇を彼の唇に触れさせれば、ああもう全身がとろけそうになるぐらい私は幸せになって死にました。