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「ゴーヤ食わすよ」


なんて言うもんだから、調理しないとおいしくないよって返すと、そんなことはありませんと言われた。いやいやいや、ゴーヤ苦いし。生はきついもんがありますよ、木手くん。


「島人なら食べれて当然です、この苦さもまた島の味ですからね」
『そうは言われましても私もともとこっちの人じゃないし』
「……言われてみればそうでしたね」


すみませんと言って、木手くんはゴーヤを鞄になおした。まず問いたい、君は毎日こうやって鞄にゴーヤを入れてきてるんですか。そして常備してるんですか。そんでもって何故持ってきているの。常々思ってたんだけど、私木手くんのそういうところちょっとわからないんだよね。


「どうかしましたか?」
『いいえなんでも』


聞ければ苦労しませんよね。木手くんの隣の席になったこの一か月間、私はずっと木手くんのことを考えてばかりだ。あ、いや、もちろんゴーヤのことだけど。ああ、そういえばこの前、ゴーヤを両手に持った木手くんが廊下で競歩していたな。光るメガネの先には木手くんと同じテニス部の甲斐くんと平古場くん。二人はゴーヤは勘弁とか言いながら逃げていた気がする。あれれ、ゴーヤは脅迫の道具だったの?ゴーヤは島の宝とか言ってたのはどこのどいつだったっけ?私があみだした、宝物だからゴーヤ持ってる説が音を立てて崩れ去っていったんだけれど。え、じゃあなんで?なんで鞄にゴーヤ入ってるの?なんでゴーヤを両手に持って二人を追いかけていたの?なんで口癖ゴーヤ食わすよなの?


『ああ、もう気になる!気になるよ木手くんのこと!』
「……それは告白ですか?」
『へっ』
「まぁいいでしょう、そこまで言うんだったら、あなたにとびっきりのゴーヤを食わせてあげましょう」


両手にゴーヤを持った木手くんが私にじりじりとにじりよってきたので、ゴーヤは勘弁!そう言って私は逃げ出した。
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