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誰もいなくなってしまった放課後の教室で、私は机に突っ伏した。
唇を噛みしめて嗚咽を止めようとするけれど、時折漏れてしまう。
もしかしたら、教室の外に聞こえているかもしれない、と思っても次から次へと流れる涙はもう止められない。


「な、何泣いとると!?」


ガラリと開いたドアに目を向けると、てっぺんに頭が当たってしまいそうになりながらこっちを驚いた顔してみている千歳くんがいた。


「てんどうしたんね?どこか痛いと?」
『別に』


きっとみっともない顔をしてるんだろう。
そんな顔なんて千歳くんになんか見せたくない。
そう思って、ぷいっと顔をそむけると、いつの間にか傍まで来ていた千歳くんの大きな手で前を向かされた。
目の前には、真剣な千歳くんの顔があった。


「なんで顔そむけると?」
『なんでもない』
「なんでもないことないばい、そんな顔してなにもない方がおかしいったいね」
『勝手に泣いてただけ』
「勝手にって……」


ふぅと、千歳くんは息を吐いて、私の頭を撫でた。
大きな手があったかくて、優しくて、安心して、また泣きたくなった。
いつもこうだ。
私に何かあると、なんでか分からないけど気づいてくれて、こうやって慰めに来てくれる。
その度私は甘えて……そんな弱虫な自分が嫌いだ。


「てんはすぐ一人でためこむからほんなこつ心配になるばい」
『ほっといてくれたっていいのに』
「ほっとけるわけなかって分かってていっとーと?」
『え?』
「俺がてんをほっとけるわけなかっていっとると」


ぽかんとしていると、でこぴんされた。めっちゃ痛い。手加減を覚えてお願い。
やった本人は本人でにかにか笑っている。
確信犯め、今度こそぎゃふんと言わせてやろう。
今度こそ……強い自分になって、千歳を励ませるような大きな人間になろう。


「愛しとーよてん」


全てが始まるのはそれからだ。
くだらないことで泣いてるうちは、私の気持ちはその程度だったってことだ。
私は、顔を袖でごしごしと拭いてから、千歳くんの胸倉をつかんでおもいっきりひっぱった。
目の前には少し驚いた顔の千歳くん。


『いつか追いついてみせるから、それまでその気持ちとっておいてね』
「はよせんと、俺待ちきれんばい」

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