▼ ▼ ▼

『ねぇ……今日、何の日か知ってる?』
「知らん」
『え、そ、そっかー』
「なんやねん」
『やー?なんでもないよー?』
「なんやさっきからくねくねしよって、小春ちゃうんやから自重せえよ」
『まじ一氏ほろべ』
「死なすど」


まぁ、期待はしてなかったけど。
それでもちょっとは、さ、期待しちゃってもいいのかなーなんて思ってた私がバカだったのかもしれない。
小春ちゃん命、小春ちゃんにしか目がない、この一氏がまさかバレンタインのお返しなんて用意してるはずがない。
そんなこと分かってたはずなのに、いつの間にか周りのホワイトデーのリア充雰囲気にのまれて、思わず声をかけてしまったのだ。
バカだ私、バカすぎる。
自分が滑稽すぎてなんだか笑えてきたわ、あっはっは!


「自分、何笑てんねん」
『別に』
「なんやさっきからはっきりせぇへんし、いきなり笑うし、今日変やで?」
『べーつーにー!』
「何おこっとるんや」
『なんでもないし』


そう言って、そっぽを向けば、すんごい視線がつきささる。
もう、ホントなんなの。
期待した方がバカだったんじゃなかったの。
もう一度、一氏の方を見れば、今度は一氏が顔をそむけていて。


「あ、あーっそういえばーっ」
『何』
「きょ、今日、俺小春にやろうと思ってクッキー持ってきたんやけど、多すぎてなーっ」
『で?』
「だ、だからっ!」
『何よ』
「や、やる言うてんねん!アホ!死なすど!」
『……小春ちゃんのついで、なんだ?』
「せ、せや」
『ふぅん』
「……なんか文句あるんか」
『ううん、一氏らしいなって』
「!」


あーあ、なんだ、ホント、さっきまでの自分が嘘みたい。
すんごい嬉しい、期待してよかった。
そう思うと、顔がゆるんでしょうがない。
変な目で見られようともかまわない、嬉しいほうが断然に勝る。


『ありがとう、一氏』


一氏には似合わないかわいいピンク色で綺麗に包装されたクッキーを胸に抱き、一氏にお礼を言った。
思わず嬉しい嬉しいとつぶやいてしまうほどに嬉しかったから。
すんごい心をこめて言ったおかげでなのかなんなのかわからないけれど、ふいに一氏に呼びとめられて、明日もっと楽しみにしてろなんて言われるなんて、もう、なんていうか、いろいろな意味でもっと期待しててもいいのかなーなんて。
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -