▼ ▼ ▼
『あ、あーああー』
「梓月さんどないしたん?さっきから」
『あ、侑士くん、お疲れ様』
「梓月さんもお疲れさん。喉気にしとるみたいやけど」
『あーうん、今日レジやってたら急に声掠れてきちゃってさぁ……風邪の前触れかなぁ』
「まぁ、ここ乾燥しとるからなぁ」
『そうなんだよね!つらいわぁ……手もなんかかっさかさだし』
「そないに荒れてるようには見えへんけど。いっつも綺麗な手やなおもっとったんやで」
『本当?それは嬉しいなぁ……でもぼろっぼろだよ実際』
「あ……せや、この前姉からハンドクリームもろたから梓月さんにやるわ」
『えっ?悪いよ!』
「どうせ俺使わへんし。俺から薔薇の香りなんかしだしたらなんやかなわんわ」
『跡部くんみたいだね!』
「あれ?梓月さん跡部知っとるん?」
『うん、前に一度お店に来てくれたことがあって。その時薔薇のいい香りがしたの覚えてる』
「へぇ……あの跡部が」
『その時うちの部員がお世話になりますって挨拶までしてくれたんだ!』
「跡部……」
『あっ、じゃあハンドクリームもらうかわりに私もこれあげるね』
「飴ちゃん?」
『そう!私喉どーしても酷使しちゃうから常にのど飴持ち歩いてるんだ』
「せやったんか……」
『ごめんねぇ、こんなにちゃっちいのと交換なんて』
「……そないなことあらへんで、梓月さんにもろたっちゅー事実がめっちゃ嬉しい」
そう言った侑士くんの笑顔は初めて見る眩しさでした。