▼ ▼ ▼

『ねーちょうたろう』

「どうかしましたか?」

『跡部ってさー』

「跡部さん、ですか?」

『きっと貰ったチョコ全部食べるんだろうね』

「どうしてそう思うんですか?」

『だって、あいつ、なんだかんだいって人の気持ちを大切に扱ってるもん』

「まぁ......確かに」

『だとしたら、食べてもくれない相手にあげるよりは跡部にあげた方が、あげる子もチョコも幸せかもね』

「……」

『ちょうたろう?』

「なんですか、それ」

『何が?』

「俺に対する恨み言ですか?」

『……なんでそう思うの?』

「……もういいです、なんでもない」

『ちょうたろう、また女の子たちからプレゼント受け取らなかったんでしょう?』

「……」

『まぁ、でもさー』

「……」

『チョコ溶かしてまた固めただけだけど、それなりに頑張って作ったチョコをどうでもいい男にあげるほど暇じゃあないよね、女の子も』

「何が言いたいんですか?」

『私は嫌がられても拒否されても食べてもらえなくてもその好きな人に渡すってこと』

「……」

『というわけで、受け取ってね。ちょうたろう』

「俺が」

『ん?』

「俺が受け取らないのは、気持ちに答えるつもりがないのに受け取るのはその人に対して失礼にあたると思っていたからです」

『ふうん?』

「でも、俺は、てんさんの気持ちずっと受け取るつもりでいた。ただてんさんの気持ちしか受け取りたくなかっただけです」

『……』

「ずっと気づいてないふりしていたのはてんさんの方なのに、俺に恨み言を言うんですね」

『だからこうやって渡してるじゃない』

「遅い......遅いですよ」

『ちょうたろう』

「なんで今頃」

『ごめんね』

「……幸せにならないと許しませんから」

『ありがとう』



大好きだったよ、
と過去形にしかできない




(そう言って去る彼女の白いドレス姿がなんだかまぶしかった)
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